2007-01-01から1年間の記事一覧

オリジナル

異質なものを混ぜると意外な味が生まれる。 「日曜ナントカ学」(朝日新聞28日『be on Sunday』)によれば、麦茶・牛乳・砂糖を混合すると、コーヒー牛乳。ホットミルクにたくあんを加えれば、コーンスープになるそうだ。 素材が違っても、組み合わせ次第で…

余白

見開きのキャンバスが床上に立っている。白色とクリーム色。右上と左下に淡い黒の四角形が小さく描かれている。韓国のアーティスト、李禹煥の作品『correspondance』だ。 李は「余白の美学」について語っている。 「……描くことと描かないことが組み合わさっ…

表現スタイル

伝統的な表現スタイルに甘んじるほうが、たやすいし、無難である。しかし、それでは、新しいものがなにも生まれない。新陳代謝がなければ、伝統もまた、廃れるだろう。 だれもが小津の作風の特徴として挙げる「ローアングル」は、最初はハリウッド流のモダニ…

幸福な一日

たとえば、朝目が覚めたら 犬の顔が隣にあって寝息がきこえて、 起きたらいいお天気で、 いっぱい洗濯して掃除して、バルコニーの植木に水をやり、 公園をゆっくり散歩して、 帰ったらお茶を入れて本を読む。 適度に仕事も進み、 夜は親しい友人たちとごはん…

愛の鞭

日本では輝ける知的エリート集団として伝説的に語り伝えられている旧制の第一高等学校の寮の伝統に〈鉄拳制裁〉なるものがあったそうで、学校の名誉を汚した者の頭を殴ることが〈愛の鞭〉であると知的エリートも思い、民衆もこれに毒されていた。(佐藤忠男…

気楽社会

労働時間にも格差がある。 年間労働時間の国際比較(2004年)を見ると、アメリカは1948時間、そして日本が1996時間となっているのに対して、ドイツは1525時間、フランスは1538時間と400時間の格差がついています。……年間の有給休暇は日本が8日、アメリカは13…

リピーター

店にはたくさんの客がやってくる。その十人に一人が「なかなかよい店だな。気に入った。また来よう」と思ってくれればそれでいい。十人のうちの一人がリピーターになってくれれば、経営は成り立っていく。……しかしその「一人」には確実に、とことん気に入っ…

使徒

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』(日本、庵野秀明)で、14歳のシンジは、自分をいじめた同級生を使徒の襲撃から救う。そのおかげで同級生に見直され、戦闘の際にも励まされる。 これほど都合よくいじめが解消できるのかという疑問が湧くが、ともかく使徒と…

旅の入口

就職試験の面接で、自分はガンジス河でバタフライをしたと口にしてしまった女子大生が、有言実行とばかりにインドへ渡る。ドラマ『ガンジス河でバタフライ』(監督・李闘士男、脚本・宮藤官九郎)は、こんなストーリーだ。 彼女は道中でさまざまな文化ギャッ…

安全保障

改憲論の争点となっている「安全保障」とは、なにか。 独協大の古関彰一教授(憲法史)が、『週刊金曜日』10月5日号のインタビュー(『「美しい国」よ、サヨウナラ!』)で、述べている。 英国の『オックスフォード大辞典』では、「危険にさらされることなく…

たそがれる

『めがね』(日本、荻上直子)の舞台は、南の海辺の小さな町。観光スポットもない町で旅人ができるのは、たそがれることだけだった。 宿屋の主人と共に、泊り客は浜辺のベンチに座り、エメラルド色の海をながめる。ジョッキでビールを飲みながら、ただながめ…

リラクゼーション

『明るい瞳』(フランス、ジェローム=ボネル)では、独り身のフランス人女性がドイツの森へ行き、きこりの青年の小屋に泊まる。外に置かれた風呂桶に裸で浸かり、太陽の光を浴びながら目をつぶる。 ここには、彼女といがみあう兄夫婦もいないし、彼女をから…

クリエイター

深く考えないで見られるお気楽なものをテレビに求める視聴者が多くなった。暗い内容の番組もあるが、すべてわかり易く創ってある。多くの視聴者が、テレビはじっくり見るものではなく、ボーっと見ていても結論を導き出してくれるものだと思っているからだ。…

路上画家の半生

ドキュメンタリー映画『ミリキタニの猫』(米国、リンダ=ハッテンドーフ)の主役は、ニューヨークの日系人路上画家だ。 ジミー=ミリキタニ。戦時中、日系人ゆえに強制収容所へ送還された。米国に愛想を尽かして、自ら市民権を捨て、その後、失職。現在は市…

不適応

環境に敏感な人は、年季を積んだところで、周囲への違和感が残るものである。 われわれは日々に、そして長年、周囲とさまざまに折り合って暮らし、そのことを苦と感じるのもいまさらの甘えであるように思いなしているわけだが、われわれの心の奥底には、どん…

映画の誕生

画コンテに情熱をかけた黒澤明。「絵画」が「映画」になる瞬間を記者は『八月の狂詩曲』のラストシーンに求めた。豪雨の中で傘を持った老婆が駆け出す場面だ。 黒澤の証言がある。 「あれは何だと言われても、僕も説明できない。要するにあれが映画なんだよ…

笑い

NHKのコント番組『サラリーマンNEO』の演出を務める大宮エリーは、かつて会社勤めをしていた。 新人の頃、大きなプロジェクトに参加していたが上司に言われる。「プレゼンは失敗だった。で、君に降りてもらう」。一番、下っ端の私だけが降りてどうなる…

聴覚

イランでは、女性がスタジアムで男性のスポーツを観戦することが禁止されている。試合を見たければ、男装して潜入するしかない。 『オフサイド・ガールズ』(ジャファル=バナヒ)はイランの映画だ。ワールドカップ・サッカーの代表決定戦当日。スタジアムに…

他人幻想

友達関係は、互いの距離を意識しないことで、かろうじて保たれる。 魚喃キリコの漫画「友達のおしまい」(『痛々しいラヴ』祥伝社・所収)の「あたし」は、学生時代の女友達、マチダと卒業以来4ヶ月ぶりに会って酒を飲む。 酒に酔いながらも、「あたし」は、…

風景

『長江哀歌』(中国、ジャ=ジャンクー)には、巨大な建物がロケットのように離陸したり、一瞬で崩壊する場面がある。 建物というのは、日々建て替えられ、姿が変わるもの。植物のように伸びていったり、ひしゃげたりするのだから、胞子のように飛んでいって…

シェフ

恋愛映画『厨房で逢いましょう』(ドイツ・スイス)の主役は、天才シェフと子持ち女だが、女の夫も印象深い。仕事がうまくいかず、シェフの庭を荒らしたり、ワインセラーを破壊したりといったかんしゃくぶりが、痛々しくて哀しい。 脇役の存在感が、作品の隠…

1952年、コペンハーゲン北西部の湿地でグラウベール人のミイラが発見された(『ナショナル ジオグラフィック』9月号「湿地に眠る不思議なミイラ」参照)。 ミイラは、だれか。なぜ殺されたのか。 コペンハーゲン大学の法医学者、ニルス=ルノープは、解明の…

角度

「横顔って右と左で全然違うし、正面とはまた違った顔が見られるから、眺めていると楽しいんですよね。笑ったときの口角の上がり具合とかね……」(aiko談―『月刊歌謡曲』10月号のインタビュー) 物事を同じように見ていると飽きてくる。そのうち興味がなくな…

まだ戦後ではない

ドキュメンタリー『陸に上った軍艦』(日本、山本保博)では、映画監督・新藤兼人が太平洋戦争末期の軍隊生活を回顧する。 訓練という名目で下級兵は尻を殴られ、靴をさかさまに履かせて行進させられる……。中身こそ違えど、こうした日常は、現代人が見ても、…

ブラッド=ピットに倣え!

スロットマシーンに入れるコインを席に1枚だけ残し、男が立ち去る。女がそのコインを入れると、マシーンが大当たりする。 『オーシャンズ13』(米国、スティーブン=ソダーバーグ)を見た人のなかには、ブラッド=ピットが演じた男に倣って、だれかを大もう…

のんびりと、

晴れた日、スタイリストの伊藤まさこは、都内をてくてく、すたこら歩く。ギャラリーでかわいい展示を楽しみ、おいしそうな匂いをかぎながらパンを買い、アンティークの家具が置かれた喫茶店に入る。 著書『東京てくてくすたこら散歩』(文藝春秋)で紹介され…

成功ってなに?

団塊世代の人々は、競争好き。それを押し付けることにも熱心だ。『サラリーマン インタビュー編』(8月27日から日経新聞の朝刊に連載)が興味深い。 「今の若い人に会社での出世はどう映るのだろう。……自分の幸せ、目の前の風景以外に興味がないということに…

クッション

女が電車の座席で居眠りし、横の男にもたれかかっていた。 駅に着き、男が席を立った。女の体が傾く。端の手すりにぶつかりそうになった。金属だから頭をぶつけたら、けがするだろう。 すんでの所で、別の男が座った。男の肩には女の頭が乗っかっていた。 女…

選別の時代

ファミリーレストランで女たちが会話していた。 「こども、どっちがいい?」 「男の子がいいな」 「女の子が産まれたら?」 「うーん、ポストに入れたい」 冗談なのか、本気なのか……。

雨上がりの夜

でっぷりと太った男が、自販機にタバコを詰め始めた。 付いてきた猫は、退屈したのか、気持ちがいいのか。男の足元で丸くなり、やがて眠った。

アクセスカウンター