2020-05-01から1ヶ月間の記事一覧

こんなときでも

年の離れた男女と、男の娘。オンラインの会話しかできない人々が、オンラインだからこそ成立するコミュニケーションの機微を通じて、望みを伝えあう。 『いまだったら言える気がする』(日本、行定勲)は、プロの表現によるショートムービーだ。

告白の相手

保険金目的で夫を殺した妻と、共謀する保険外交員。『深夜の告白』(米国、ビリー・ワイルダー)は、二人の愛憎関係に目が行きがちだが、事件を追及し、同僚を見守る調査員の存在感を忘れてはならない。告白すべき相手がいるからこそ、真相が明るみになった…

監督の適性

ジョージ・M・コーハンの伝記ミュージカル『ヤンキードゥードゥル・ダンディ』(米国、マイケル・カーティス)は、米国の魂をたたえた戦意高揚映画とされるが、野心と挑戦心で文化をけん引し、家族も大事にする理想の米国人を躍動させる心地よさで、嫌味はな…

個人を知る

プリーモ・レーヴィの『休戦』(岩波文庫)は、貴重な記録小説だ。収容した側の非道行為を綴るよりも、収容された側の個性をよみがえらせることに力点を置いている。 個性の違い、行動の意外性……。一人一人の人間を、集団ではなく、個人としてとらえるように…

安らぎの時間

『ゴッド・ファーザー』(米国、フランシス・フォード・コッポラ)3部作で一貫しているのは、マフィア一家のボス、マイケル・コルレオーネの憂いだ。 一家を支えるための活動とはいえ、ゆくゆくは合法的な組織に転換したかった。理想は実現間近で妨げられ、…

戦後の日常

戦時下で起きうる出来事が、戦後の日常ではどう変わるか。有閑マダムが夫の出兵を知って動揺するという設定を戦後の転勤に置き換えた『お茶漬の味』(日本)をはじめ、小津安二郎の映画には、戦後の作品であっても、必ず戦争の影がある。

本性を見よ

目が見えなくなるという奇病が蔓延し、人々は隔離施設に収容される。見えないことでむき出しになる人間の本性。目の見える人間が、彼らの行状を見つめる。 人間をいたずらに賛美してはなるまい。ジョゼ・サラマーゴ、雨沢泰:訳『白の闇』(NHK出版)では、不…

自己責任の不均衡

コロナ禍で明確になったように、危機的な市民生活を支えているのは、スーパーマーケットのレジ、運送業者、ごみ収集車などの低賃金労働者である。……そして、危機がやってくると、さらなるリスクをとらされる」(中島岳志「責任のアウトソーシング」―『週刊金…

男の功罪

『スケアクロウ』(米国、ジェリー・シャッツバーグ)では、長旅を経て妻子との再会を目指した男が、子どもの死を知って統合失調症になる。これは決して唐突なことではない。それまでの突飛で過敏すぎる彼のふるまいからすれば、残酷な現実(妻の吐いた虚偽の言…

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