2013-03-01から1ヶ月間の記事一覧

作画の余地

フランシス・ベーコンは、写真をヒントにしたり、モチーフの材料にすることが少なくなかった。 完成された絵画よりも、絵として手を加える余地があるからだ。

金と愛

飛び降り自殺した銀行員がばらまいたデータは、日本の金融政策を崩壊させる秘密計画だった――。 『相棒シリーズ X DAY』(日本、橋本一)であばかれる財政危機のシナリオは、決して絵空事ではない。 金に愛が絡んで犯罪を助長する法則も、人間が存在する限り…

フィクションの力

体面を重んじ、集団自決を回避できない戦時下の男たち。権力に執着せず、生きることに忠実な現代の女たち。 燐光群『カウラの班長会議』(ザ・スズナリ)は、第2次大戦下のオーストラリアと現在の日本に派生した難題を、異なる時代と性差を舞台上で交差させ…

無差別殺人犯が生まれるまで

『ぼっちゃん』(日本、大森立嗣)の主人公は、秋葉原無差別殺人犯をモデルにしつつ、より強烈な人物になっている。 孤独で無器用な梶。未来の感じられない派遣労働者だ。負け組とののしられ、ネットの書き込みで憂さを晴らす。 梶を取り巻く男たちも、睡眠…

わたしの小説

黒田 わたしの書き方だと、長い全体をいっきに書くのはすごく大変なんです。短めのものをきゅっと、気が済むまで書いて、短時間でばっと見わたせるぐらいの長さを職人仕事でこまかくなおしてしまうほうがやりやすい。部分ごとの順番が決まったところでまた修…

戦争と日常

戦時が暗いばかりとは限らない。いつ焼け出され、命を落とすかもしれぬ絶望的な境地は、生活に緊張感を与え、精神を高揚させ、希望さえも育む。戦後世代でも、震災直後の清涼な充実感を否定できまい。 戦争が続くにしろ、終わるにしろ、日常は、いつ終わると…

活劇の楽しみ

勧善懲悪に徹したストーリー。戯画化された強烈なキャラクター。 『ジャンゴ 繋がれざる者』(米国)は、クエンティン・タランティーノが、現代のマカロニウエスタンを楽しんで作っている。 楽しみが共有できる分、観客も、活劇の存続と進歩に、感謝できるのだ…

米国の映画

ビンラディンを敵としか思わず、暗殺のために拷問や民家襲撃を必要悪と考えるCIAの発想を黙認するのは、危険な発想である。 作戦を先導した女性局員を肯定できるわけではないが、英雄として描きにくい存在を直視した『ゼロ・ダーク・サーティ』(米国、キ…

世界崩壊後の心得

世界崩壊後の近未来へタイムスリップし、元の世界に戻れなくなった子どもたち。 『漂流教室』(楳図かずお、小学館文庫)の大人たちは、環境の変化に対応できず、権益に固執するばかり。子どもたちは、残されたわずかな物資と、小さな知恵を駆使して、生き抜…

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