2015-01-01から1ヶ月間の記事一覧

名画の継承

名画をただ並べるだけで価値が伝わるものではない。予算の制約の下で支える運営。明快なコンセプトでの企画。卓抜な見識による解説。『ナショナル・ギャラリー 英国の至宝』(仏・米国、フレデリック・ワイズマン)で紹介されるスタッフは、すべて高度な技能…

望ましくない純文学

望まれた設定。望まれたキャラクター。望まれたオチ。 人の好さと技術が伴えば、好感度のいい小説を書くこともできる。 印象は爽やかでも、純文学の場合、それだけでいいのかどうか。好感度を裏切るような毒を秘めていなければ、おやつの域を出ない。 たとえ…

永遠の警鐘

特攻隊員がどこまで純粋だったかどうかはともかく、純粋であればあるほど、いいように利用されやすいものだ。 彼らの死に感涙する者ほど、彼らのように死ぬことはない。狡猾でしたかかな分、実に安全に生きている。当事者でないからこそ、死を賛美し、陶酔で…

正しさの圧力

昨年11月、過去の英字紙で慰安婦問題の報道に関し、「性奴隷」などの表現を使ったとして、『読売新聞』がお詫びを掲載した。 政府のイデオロギーに追従し、世界のメディアの常識と離脱した同紙。ジャーナリストのマイケル・ペンは、『週刊金曜日』9日掲載の…

バラバラの手紙

少数の男女が、愛でもつれ、飲みながら語り合う。 ホン・サンスの映画は、設定も展開もシンプルでありながら、それでいて飽きさせない。 『自由が丘で』(韓国、ホン・サンス)では、片思いの女を追って訪韓した日本人と地元カフェの女主人やゲストハウスの…

人生の転落

のどかな田舎での避暑。美しい妻、愛らしい子どもたち。 幸福なはずの夫が、妻の驚くべき告白によって、豹変。夫婦関係が一変する。 『ヴェラの祈り』(ロシア、アンドレイ=ズビャギンツェフ)の夫婦は、決して打ち解けてはいない。心に壁がある。知人や親…

世代を超えて

路上の切傷未遂と、異国の紛争。時代も性質も異なる体験に接点があるのか。 山田太一のドラマ『ナイフの行方』(NHK)では、通り魔寸前の青年を老人がかくまったことから、二人で同居するはめになる。 思い付きの善意だけで、結びついたわけではない。老…

想像力の範囲

『ティム・バートンの世界』(森アーツセンターギャラリー)では、映像よりもイラストやオブジェが、多数、展示されている。 エドワード・ゴーりーばりの繊細で毒っ気のある絵は、不気味ながらユーモラス。想像を絶するほどの破滅性がない分、安心感を与える…

今が青春

生徒も教師も、それぞれに秘密があり、葛藤をかかえている。宮藤官九郎脚本の『ごめんね青春!』(TBS)は、男子高と女子高、おちこぼれとエリート、仏教とキリスト教という相反する学校の合併をきっかけに、関係者が壁を乗り越える青春ドラマだ。 過去を振…

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