2018-08-01から1ヶ月間の記事一覧

お墓の所在

母の死後、亡父の墓の所在を巡って、後妻の娘と先生が衝突する。『妻の愛、娘の時』 (中国・台湾、シルビア・チャン)は、役所の手続きや遺族間の利害調整がややこしく、一筋縄ではいかないお墓の在り方を問いかける。

佐藤泰志の世界

どこか淡く、不足感のある佐藤泰志の小説は、映像化されることで、ようやく完成する。いわば、映画向けの小説なのだ。『きみの鳥は歌える』 (日本、三宅唱)で触れ合う男女3人の世界も、映像でこそ躍動し、空間を広げ、ずっと前からあり、これからも続くよう…

開き直り

……「おれにわかるように説明しろ」という態度では絵も音楽もダンスも小説も、それから料理も、人の気持ちもわからない。 ここに集めた小説の書き方は荒っぽく見ええたり説明不足と感じられたりするかもしれないが、私はこれらの小説を歌のように書いたんだと…

スパイ戦の連続性

陸軍中野学校のエリート青年たちは、沖縄の島民に取り入り、 ゲリラ戦に少年兵を誘導。地元民を相互の監視役にし、島民を強制移住させた。国体護持という名目は、離島の少数の民が犠牲になるのも、やむなしとする。 守るのは、民衆ではないし、民衆を信じて…

個の叫び

同性と付き合う。父親不明の子を産み、育てる。『極私的エロス・恋歌1974』(日本、原一男)の女は、現代ならば、決して特異とは言えないタイプだが、当時としては先鋭だったろう。 被写体として志願し、自然出産の姿を撮影する。衝動の源は不明だが、ここには…

哀れみなんか要らない

車いすを下り、街をはいずりまわる脳性麻痺の男たち。『さようならCP』(日本、原一男)で、賢明に言葉を発し、家族や仲間と衝突する彼らは、世間からの憐憫を駆逐する。

映画の根幹

ヘリの操縦、バイクの疾走、ビル間の跳躍……。スタントを自ら行なうトム・クルーズの熱演だけではない。『ミッション:インポッシブル フォールアウト』(米国、クリストファー・マッカリー)は、映画としての面白さも、怠っていない。

自意識の変遷

建築家夫婦の特異な家に住む4人家族。『未来のミライ』(日本、細田守)は、それぞれの体験と感情を過去から未来につなげる。妹の誕生によって芽生えたこどもの自意識が、混沌としたまま、変遷していくさまは、大半の観客には理解されなったようだが、それだけ…

カメラの使い方

ポラロイドカメラを持つ女が、三角関係にある男女を振り回し、修復する。『クレアのカメラ』(韓国、ホン・サンス)は、設定も演出も、巧みな喜劇だ。

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