2013-04-01から1ヶ月間の記事一覧

神話の土壌

水没寸前の村に暮らす少女が、大嵐のあと、重病の父のために音信不通の母を探しに行く。 大国の一員でありながら、未開地のような世界に生きる人間たち。 『ハッシュパピー バスタブ島の少女』(米国、ベン・ザイトリン)は、米国の南ルイジアナという現実の…

日常スナップ

自然体にふるまう老人。悪ふざけする子ども……。 どこにでもいるような人間が、どこにでもある茶目っ気を見せている。 元気さも陽気さも、身近にあふれているものだ。あえて、遠出したり、風変わりなものを探さなくてもよい。 『梅佳代展 UMEKAYO』(…

ウイスキーの味

毎年、一定量が蒸発してしまうウイスキー。その分だけ盗んでも、わからないだろうし、盗んだ酒で稼げれば、どん底生活から脱出できるかもしれない。 『天使の分け前』(イギリス・フランス・ベルギー・イタリア)は、更生中の青年が妻子を養うために作戦実行…

パターンと創作力

自分で「こういうもんだ」と思って、ずーっと何度もやっていくと、どんどん作品が腐っていくんですよ。腐っても平気でやっていける人はいる。延々と同じパターンをやれる人がね。でも、それは自分で変えないと。つまり、自分が、自分の脳みそで、「こうやっ…

現実とファンタジー

エンデがファンタジーを書き始める時、なによりその基本構造が、しっかり組み立てられている。それでもかれが行き詰ってフラフラしているとすれば、その時かれは、いったん作ったファンタジーの仕掛けを担ったまま、現実世界へ戻っているのである。そのよう…

移住

結婚後、地方に転勤した夫婦は、うまく行くのか。 青年団『この生は受け入れがたし』(こまばアゴラ劇場)は、小津安二郎『麦秋』の後日談だ。 東北に行ったはいいが、慣れぬ土地、夫の仕事を理解したとは言い難い妻。夫との生活に、歩調を合わせることがで…

複数の顔

リムジンの中でメイク・アップ。依頼に応じて、いくつもの役を使い分ける男。 『ホーリー・モーターズ』(フランス・ドイツ、レオス・カラックス)の主人公を特異な人物と思ってはなるまい。 一日にいくつもの場面を経験し、複数の顔を演じる役者は、我々自…

女と男

離婚後の運命は対照的だ。 妻は慰謝料も受け取らず、独力で娘二人を育て上げる。 夫は後妻に逃げられ、幼い息子を残したまま、息を引き取る。 娘は、しぶとく、息子は、もろい。 『チチを撮りに』(日本、中野量太)は、女を立てつつ、男に厳しいファミリー…

晩年

現代アートの収集に生涯を費やした夫婦にも、エンディングが近づいてきた。美術館に作品を寄贈したあと、夫のハーブが死に、ドロシーは、習慣だった買い付けをやめてしまう。部屋いっぱいの作品を整理し、壁に飾るのは、亡き夫の作品のみ。 『ハーブ&ドロシ…

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