2010-10-01から1ヶ月間の記事一覧

もう一つのペンネーム

『消えゆく「作家像」』(朝日新聞29日夕刊)によれば、すでにペンネームを使っている作家が、別の筆名を使ったり、共作で別名を名乗っているという。 著名な作家名は商業的に利用しやすい一方、イメージを固定化させる弊害もある。もう一つのペンネームは、…

小説の意識

斎藤美奈子は、〈リアリズムから外には半歩たりとも出ようとはしない〉といういわゆる旧型の同人誌と、文芸誌を比較しつつ、前者の小説に欠けている部分を指摘する。 釣りや演劇という古典的な道具立てでも読者を異次元に誘うことはできるのだ。〈「今の話、…

21世紀の映画

映画は、資本主義とか社会主義とか、そういった国家権力が意図的に作り出そうとしない限り存在できない芸術です。……そのために、映画は世界と世界が対立している最前線に立たされる運命にあり、いつ総攻撃を受けて崩壊してもおかしくない状況にあるのだ、と…

楽しんで作る

ロマンチック・アクション『ナイト&デイ』(米国、ジェームズ・マンゴールド)は、こんなばかなと言いたくなるような場面の連続。男女が暗殺者に追撃される展開は、本来深刻なはずだが、まるでギャグのように見える。 ご都合主義を承知のうえで、スタッフが…

他者のとらえ方

5時間近い大作『ヘヴンズ ストーリー』(日本、瀬々敬久)は、復讐の連鎖といったテーマよりも、他者に対する評価の格差が興味深い。 ある人にとっては大事な人間が、別の人にとっては単なる罪人だったり、虫けらだったりする。自分と相手との関係次第で、大…

物語の寿命

僕がこんなことを言うのはなんだけど、何度読み返したところで、わからないところ、説明のつかないところって必ず残ると思うんです。物語というのはもともとがそういうもの、というか、僕の考える物語というのはそういうものだから。だって何もかもが筋が通…

夫婦の境地

『ある結婚の風景』(スウェーデン)は、6話からなるテレビドラマ。巨匠イングマール・ベルイマンが監督と脚本を務めただけあって、夫婦間のやりとりは厳しい。 理想の夫婦。傍目には、そう見えたが、お互いに本音を隠し、決して譲らなかった。すべてをぶち…

複雑化の反動

作品としての出来はともかく、複雑化した時代だからこそ、受けるドラマもある。 少女漫画が原作の『君に届け』(日本、熊澤尚人)は、純粋な高校生たちの友情と恋愛を徹底してベタに表現することで、観客の涙腺を刺激する映画だ。 時代が流れても、感情の源…

芸術的感性

草木に話しかけ、部屋にいるときに大声で歌う。 そんな中年の家政婦が身近にいたら、周囲は顔をしかめ、おかしな人だと陰口を叩くだろう。 だが、そんな人間こそ、常人にはない芸術的感性に恵まれているかもしれないのだ。 『セラフィーヌの庭』(フランス・…

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