2017-06-01から1ヶ月間の記事一覧

物語と小説

村上 そういう物語の「善性」の根拠は何かというと、要するに歴史の重みなんです。もう何万年も前から人が洞窟の中で語り継いできた物語、神話、そういうものが僕らの中にいまだに継続してあるわけです。それが善き物語の土壌であり、基盤であり、健全な重み…

奏でる者たち

耳の聞こえない両親の愛と、彼らを見つめる娘たちの葛藤。 ドキュメンタリー『きらめく拍手の音』(韓国、イギル・ボラ)は、心の声が聞こえ、音の貴重さを実感させる。

世界は写真

写真であり、絵画でもある。日常のスナップでもあり、ファッションのショットでもある。『ニューヨークが生んだ伝説 写真家 ソール・ライター展』(Bunkamura ザ・ミュージアム)の写真群は、淡いようで、心地よい。自宅近くの風景でさえ、着眼点と技法次第…

画家の死

社会主義政権の圧政で、地位を奪われ、不遇の前衛画家、ブワディスワフ・ストゥシェミンスキ。アンジェイ・ワイダの遺作『残像』(ポーランド)は、画家の後半生を追いつつ、過度な盛り上げや脇役の誇張を避け、シンプルな語りに徹している。それでいて、画…

感情のガイド

目が見えなくても、映画は楽しめる。ただ。情景や動作の説明が必要だ。役目を追うのが、音声ガイドである。『光』(日本・フランス・ドイツ、河荑直美)は、音声ガイドのヒロインが、伝えることに悩みつつ、奥底の感情に目覚めていく。

開場

恋愛劇であり、表現論でもある。 又吉直樹『劇場』(新潮社)は、どちらの読者にも開けた小説なのだ。

自分の身は自分で

マスコミ、学校関係者、人権弁護士……。人を守るべき立場の者が、事件の一面しか知らぬまま、教師を責め立てていく。 モンスターペアレントの策略によって、いじめ教師のレッテルを張られた小学校教師の冤罪。福田ますみ『でっちあげ―福岡「殺人教師」事件の…

愛情物語

ハリウッドの黄金期を支えた絵コンテ作家とリサーチャーの夫婦。たとえ名前が表に出なくても、彼らのアイデアや調査が多くの名作を生んだ。 ドキュメンタリー『ハロルドとリリアン ハリウッド・ラブストーリー』(米国、ダニエル・レイム)は、二人の功績だけ…

世界の砦

『家族はつらいよ2』(日本、山田洋次)では、高齢ドライバーの是非、突然死のすったもんだなど、高齢者を取り巻く現代の問題が、目ざとく取り上げられている。 同級生との出会いも、小津映画的な悲哀に行き着くわけではない。あくまでドタバタ劇を貫いて、最…

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