2023-09-01から1ヶ月間の記事一覧

ゲームの技術

実際の運転経験がほとんどないゲームオタクがプロレーサーとなり、世界的なレースで表彰台に上がる。実話をもとにした『グランツーリスモ』(米国、ニール・ブロムカンプ)では、青年がいきなりプロデビューするわけではなく、綿密に設定された訓練課程が紹…

状況追随

状況追随型の政治は、突発的な事態や、長期的な視野を要求されない限りは、大きな失策をせずに持ちこたえられる。朝日新聞政治部『鵺の政権』(朝日新書)でたどるのは、何をやりたいのかわからない岸田政権の軌跡だ。増税や説明不足を巡って、政府を転覆さ…

群衆 

関東大震災直後、暴動を恐れた村人が、行商人の一団を朝鮮人と勘違いし、無差別に視察する。民主的な村長も、血気盛んな群衆の前では、何の抵抗力もない。 お国のため、家族のためという大義名分の前には、報道がデマかどうかなど、問題にはされない。群像劇…

漆器

兄が海外で同性婚をするという話を除けば、『バカ塗りの娘』(日本、鶴岡慧子)は、ありふれた家族の物語かも知れない。けれども、日々の暮らしの中で、一番生き生きしているのは、伝統工芸・津軽塗を手がける場面だ。 漆を塗っては研ぎ、いくつもの色を重ね…

過去と未来

ホロコーストの傷跡が残るのは当事者だけではない。運よく死を逃れた者も、その後の影響から、遠ざかることはできない。短篇集『アントンが飛ばした鳩』(バーナード・ゴットフリード、柴田元幸・広岡杏子:訳、白水社)では、ポーランドのユダヤ人家庭に生…

少女の死

まじめな女子高校生が実習生として勤めたコールセンターは、いわゆるブラック企業だった。学校にも両親にも彼女の訴えは理解されず、周囲の利害関係も絡んで追い込まれた彼女は、命を絶つしかなかった。ダンス仲間だった女性刑事は、少女真の問題として片づ…

人柄

破滅型ではないロックミュージシャンの夫婦は、家庭生活や交流でも人を幸せにした。『シーナ&ロケッツ 鮎川誠 ロックと家族の絆』(日本、寺井到)では、家族や音楽関係者との交流が、バンド結成以前から、彼らの死まで公開されている。ステージだけではな…

文明の想像

スペインに侵攻されるまで、栄華を誇った古代文明。『特別展「古代メキシコ ―マヤ、アステカ、テオティワカン』(東京国立博物館 平成館)で展示された造形物から、農業国家として生き抜いた人々の世界観をどこまで想像できるか。

大義名分の爆撃

第2次大戦下、ナチス打破の掛け声の下、連合軍は特定地域への大量爆撃を実施。軍需工場が標的と言っても、実際に破壊したのは、市街だ。損害を受けたのは、住民や建物だった。工場で爆弾や戦闘機を作る労働者は、大義名分のもと、大勢の犠牲者が出ることなど…

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