2012-11-01から1ヶ月間の記事一覧

人間は多様

震災はもっといろいろな角度から描かれるべきです。たとえば、同情されたくない老人。一人だけ生き残った人の、理由のない罪障感。人々の不幸につけ込んだ小悪党の貧しさと孤独。近づけなかった異性と避難所の一つ屋根の下で眠る少年のときめき。立ち入れな…

未完であること

「僕の作品はつねに未完成」と横尾は言う。「疲れたから、飽きたからと筆を置き、完成させる間もなく次の作品に入る。ある時ふと、未完の部分を完成させてみようと同じモチーフから描き始め、展開させてみたりする。けれど、またこれも未完。その連続で反復…

人類の起源

アパートで共同生活する男女8人が、掴み合い、性交し、飯を食べ、眠る。 ポツドール『夢の城 - Castle of Dreams』(東京芸術劇場)では、言葉を話さず、猿のような仕草で過ごす人間の生態が実演される。 人の声の代わりに音を発するのは、車・ゲーム・テレ…

演劇という文化

実作の現場をメインにとらえた『演劇1』から、『演劇2』(日本・米国・フランス、想田和弘)では、焦点を劇団の経営や演劇の公共化にまで広げている。 演劇という文化が、生活に密着しているのであれば、地方や海外への進出、政治家他スポンサーとの交流も…

それでもアナタがやっている

『終の信託』(日本、周防正行)は、医師と患者のプラトニックな愛情ドラマかと思いきや、終盤、一転。 非情な検察官が、エリート医師の施した尊厳死を殺人だと断言する。医師の抗弁には一切、耳を貸さない。 最初に結論ありき。反論は認めない。特権的地位…

兄弟の甲子園

兄に対する複雑な感情。高校時代にやり残したことへの悔い。 そんなわだかまりが、あだち充の作品には結晶している。

映画ではない映画

反体制活動をとがめられて映画製作を禁止されたジャファル・パナヒ監督。『これは映画ではない』(イラン)では、盟友モジタバ・ミルタマスブの協力を得て、自宅マンションでの軟禁生活を撮影。役者を使うことも、屋外に出ることもままならぬ中、旧作の再見…

どん底でも

工場経営に失敗した男、投資詐欺にひっかかった息子、回収に必死の金融業者。 金に悩まされる三人の男たちが、醜態を見せながらも、生きる気力は失わない。 二兎社『こんばんは、父さん』(世田谷パブリックシアター)は、どん底の状態でも希望を捨てずに生…

歴史の物語

「歴史は素晴らしい物語の情報源であり、現代と関係しているものだ。」とレッドフォードは言う。「もっと興味深いのは、いったん歴史の中に浸り込むと、一般的に認められ語られてきたことが、必ずしも“本当”の物語ではないことに気づく事だ。知っていると思…

アクセスカウンター