2009-05-01から1ヶ月間の記事一覧

送り手と受け手

壁に落書きをする輩は至るところに存在するが、そうした連中の表現に、明確なメッセージがあるかどうか。おそらく、あるまい。 だが、『重力ピエロ』(日本、森淳一)の落書き犯は、複数の落書きにある思いを託していた。それらを解読する者がいたことは、実…

生身のアクション

『チョコレート・ファイター』(タイ、ヤーニン・ウィサミタナン)のエンディングでは、アクション場面の撮影風景が写される。 殴打されて身体を痛め、体を冷やす出演者たち。 特撮全盛の時代とは言え、生身の体がぶつかるからこそ、スポーツの試合同様の緊迫…

ドラマと事実

実話を元にした映画『余命1ヶ月の花嫁』(日本、廣木隆一)は、若いヒロインが乳がんで死んで以降、泣かせを目的とした場面が長くなり、興ざめさせる。 逆に言えば、大げさな感情表現のなかった途中までの演出は悪くない。 事実を信頼すれば、ドラマチックな…

進路

20年若返ったら、別の進路を選ぶのかどうか。中には、同じ道に進む者もいるだろう。現時点で、どちらの道が最良かは、本人にしかわからない。 妻子持ちのさえない男がバスケが得意な二枚目の高校生の姿に戻るという『セブンティーン アゲイン』(米国、バー…

栄枯盛衰

四川省・成都。そこに420工場と呼ばれる巨大国営工場があり、2007年に閉鎖された。 『四川のうた』(中国、ジャ・ジャンクー)は、労働者の実話を労働者役の俳優に語らせるセミドキュメンタリーである。 巨大工場の栄枯盛衰は、四川のおける後年の大地震を予…

子どもの見た情景

戦争や民族紛争・性差別といった主題をシンプルに描くならば、子供を使えばいい。教条臭さを防ぐことができる。『子供の情景』(イラン・フランス、ハナ・マフマルバフ)は、その好例だ。 幼い少女が市場で冷たくされ、学校で追い出され、戦争ごっこで悪がき…

師弟

弟子だからといって、師の教えどおりに演じるわけではない。師匠の落語をきいて、なにか違うなと思って、自分なりのやり方で噺をする。柳家小三治は、そう考え、実行してきた。 高座では名人芸を披露し、プライベートではスキーや食事を楽しむ。ドキュメンタ…

スラムドッグ

知っている問題しかクイズに出ない、悲惨な事態に遭遇してもその都度切り抜けられる……。 『スラムドッグ$ミリオネア』(英国、ダニー・ボイル)は、一見、ご都合主義的な映画に見えるが、恋人が顔を傷つけられ、兄も射殺されるのだから、すべてが主人公の青…

モンスターペアレント

モンスターペアレントが本物の怪物だったら? 渡辺源四郎商店の演劇『3月27日のミニラ』(下北沢ザ・スズナリ)では、反抗的な中学生の母親がゴジラである。教員はゴジラの来週を怖れて、対応がぎこちない。学校を辞めていく教員も多い。 少年の鬱屈感を理解…

平和維持

銃をぶっ放して敵を退治すれば一件落着などという単純な構図は、冷戦終結以降の世界に当てはまらない。あらゆる世界の力関係が複雑化し、デリケートになっている。 『グラン・トリノ』(米国、クリント・イーストウッド)の老人も、襲われた少年少女のためと…

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