2021-02-01から1ヶ月間の記事一覧

人間の政治

二人の報道記者による地方議員の不正報道は、ジャーナリストにふさわしい功績だが、ドキュメンタリー『はりぼて』(日本、五百旗頭幸男・砂沢智史)の面白さは、議員たちのあまりにせこい罪と、小物ならではの人間的な反応だ。罪を認めず、まともな会見も避…

人類のテスト

ウイルスなしには人類は生存できなかった。例えば、ヒトやほかの霊長類のゲノムに含まれるウイルス由来のDNA断片なしには、妊娠が成り立たない。陸生動物の遺伝子に含まれるウイルス由来のDNA断片は、記憶にとって重要な役割を果たしている。ほかにも、胚の…

映画の時間認識

蓮實重彦は、映画が映画であるために、的確なショットへのこだわりと共に、時間の意識にも苦言を呈する。 語るべき物語のためにどれだけの時間が必要かという問いに、たえず敏感であるべきだと思います。……実際、現代においても、まともな映画作家のほとんど…

昭和の最後から

再演となる青年団『眠れない夜なんてない』(吉祥寺シアター)は、2008年初演時にはなかった「昭和の最後の日」を設定に加えられたことで、同様に自粛ムードの広がっていた時代と今の何が違うかということと、何がつながっているかが見えてくる。 当時、日本…

物として

データではなく、物として手元に置くことの魅力。曲の中身はもちろん大事だが、それ以外の趣向にも作り手の誠意が現れる。

香水のように

人を惹きつけたり、悪臭をやわらげたり……。香りにはさまざまな効果がある。 『パリの調香師 しあわせの香りを探して』(フランス、グレゴリー・マーニュ)は、失職寸前の男が、挫折した調香師の運転手を務める。性格が災いして、二人とも世渡り下手。道を開…

誰も救われない

警察の側も容疑者の側も、いっさい歩むことはない。同僚も家族も、自分の主張を貫くばかりだから、お互いの立場に徹しても結局、誰も救われない。麻薬をめぐって元締めと刑事が対峙する『ジャスト6.5 闘いの証』(イラン、サイード・ルスタイ)は、極端な人…

確信の線

確信に満ちた太い線によって、画板に刻みつけられた内面の憂い。晩年、病で描けなくなった画家は、潔く命を絶った。

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