2015-03-01から1ヶ月間の記事一覧

プロフェッショナル

『ディオールと私』(フランス、フレデリック・チェン)では、老舗ブランド「クリスチャン・ディオール」の制作現場が明らかにされる。 新任ディレクター、ラフ・シモンズの指揮で、短い準備期間をものともせず、メゾン・コレクションに備えるスタッフたち。…

ドラマ制作の犯罪

『相棒 season13』の最終回では、右京を長年支えた相方こそが悪党だったという救いなき幕切れで終わる。伏線のない唐突な終わり方や、純粋だった相方の急変はもとより、鋭敏な天才的刑事が、もっとも身近にいる人物の犯行を見逃していたという失態も、シリー…

自助努力の果てに

放射能による被ばくを軽減するために、子どもを保養地で過ごさせたり、汚染された土を除去する親たち。 『小さき声のカノン 選択する人々』(日本、鎌仲ひとみ)は、日本とチェルノブイリの実状を紹介。原発事故後、より深刻さを増した被害への対応を明らか…

安息の地はいずこ

仕事にのめり込み、緊張感を味わうほど、平穏な世界とのギャップが大きくなる。家庭への帰還は危険だ。戦場同様、注意を払わなければいけない場所なのである。 『アメリカン・スナイパー』(米国、クリント・イーストウッド)の米軍狙撃手クリス・カイルは、…

空気の広がり

『フォックスキャッチャー』(米国、ベネット・ミラー)は、財閥御曹司による五輪金メダリストの射殺事件を安直なセリフやエピソードに頼ることなく、じっくり浮かび上がらせていく。解明を急がない。登場人物それぞれに不可解さを残したまま、観る者の深部…

再起のキューバサンド

オーナーの指示に従うだけの定番メニューから、屋台車で野心的な料理に挑む。 『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』(米国、ジョン=ファブロー) の料理人は、つまらぬイザコザから一流店での仕事を失って、ゼロから屋台でスタートするが、かえって活…

囲いを超えた批評

フェミニズムを突き抜け、文學の新しい実りまでをしっかりと見据える、男も女も超えた批評。それがなければ、女性作家を取り巻く伽は緩まないどころか、また新たな囲い込みを作ることになるだろう。(桐野夏生:巻末解説――笙野頼子・松浦理英子『おカルトお…

作品の成立

作品はわれわれを信頼して、その身をわれわれに委ねている。だからこそ、われわれもまた、その信頼にこたえなければならない。作品に対して忠実でいようと最善を尽くさなければならない。(小野正嗣『ヒューマニティーズ 文学』岩波書店) 文学において作品…

身近なファンタジー

前田司郎・脚本の『徒歩7分』(BSプレミアム)では、親の金で暮らす無職の30代女性が、アパートで独り暮らし。ほとんど部屋の中で過ごすだけだが、隣人やらストーカーやら元彼やら、人とのつながりは途切れず、それなりに喜怒哀楽がある。 遠出せず、身の回…

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