2018-03-01から1ヶ月間の記事一覧

声を上げる

『ニッポン国VS泉南石綿村』(日本、原一男)では、アスベスト訴訟をめぐり、住民・原告団長・弁護団・厚労省が、それぞれの立場で活動する様子が映し出されている。当然、見解や対処は分かれる。裁判は全員が納得できる判決を下すわけではなく、思惑や利害…

死者の記憶

音楽アニメ『リメンバー・ミー』(米国、リー=アンクリッチ)の少年は、死者の国に紛れ込んだ。生還のためには親族の許可が必要だ。先祖だと思って国民的大歌手に助けを求めたが、彼は先祖ではなかった。本当の先祖は、相棒のミュージシャン。彼こそが、大…

愛の絵の具

重度のリュウマチを患うモード・ルイスと、孤児院育ちの行商人エベレット。『しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス』(カナダ・アイルランド、アシュリング・ウォルシュ)は、二人の不器用で一途な夫婦愛を、画家ルイスの世界にふさわしい絵画的映像…

家族的なもの

旧友と詐欺師を追ううちに、放っておいた婚約者から愛想をつかされる男。『かぞくへ』(日本、春本雄二郎)は、悲しくも愛に満ちている。 リアルな人物造形と緻密な設定。男女それぞれの行きつく方向は異なるが、ここでは、家族的な人間関係が、広い意味でと…

住民の願い

願いと揺らぎ』(日本、我妻和樹)は、撮影者でもある監督の私的フィルムではない。 住民とのかかわり方を再三自問自答する監督よりも、住民のほうが、より切実で、存在感がある。彼らが伝統行事の復活にこだわるのは、自分たちの集落を残していきたいという…

幸福な結末

『ハッピーエンド』(フランス・ドイツ・オーストリア、ミヒャエル=ハネケ)の一家は、秘密だらけだ。経営譲渡だったり、愛人だったり……。祖父と孫娘にも、身内の死にまつわる秘密がある。海中に車いすを沈める祖父も、見つめるだけの孫娘も、結末は、ハッ…

不条理な発砲

父殺しの復讐に燃える少年の予告殺人から免れるため、男は、家族の中でいけにえを選ぶ。 『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』(イギリス・アイルランド、ヨルゴス・ランティモス)は、幸せなはずの家族を容赦なく不幸に陥れる。子ど…

迷いなき演出

列車内で発砲したテロと3人の若者との対決は、わずかな時間だけだ。それまでは、小学校生活や米軍訓練時のダメっぷりや、ヨーロッパでのゆるい観光旅行を、見せるだけ。『15時17分、パリ行き』(米国)は、それでも目を引きつけ、緊迫感あふれるクライマックス…

愛の超越

美女でもなく、野獣でもない。『シェイプ・オブ・ウォーター』(米国、ギレルモ・デル・トロ)は、さえない女と半魚人が、冷戦という時代、マイノリティーという立場を超えて、愛を成就させる。いかなるシチュエーションでも、愛は不滅だ。

住民の願い

『 願いと揺らぎ』(日本、我妻和樹)は、撮影者でもある監督の私的フィルムではない。 住民とのかかわり方を再三自問自答する監督よりも、住民のほうが、より切実で、存在感がある。彼らが伝統行事の復活にこだわるのは、自分たちの集落を残していきたいと…

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