2014-04-01から1ヶ月間の記事一覧

無器用でも光

佐藤泰志・原作の『そこのみにて光輝く』(日本、呉美保)でうごめく人々は、世捨て人風の男といい、彼と知り合う姉弟といい、だれもが古風で文学的だ。 しかし、常にややこしい道を選び、あえて不幸に陥る彼らの無器用さは、いつの時代でも存在する。 さび…

実作の才能

イラストレーター・益田エミリの『ふつうな私のゆるゆる作家生活』(文春文庫)では、様々な編集者たちとのやり取りが観察されている。 益田は、教養ある編集者の言葉に感心させられるが、編集者は言う。自分が物語を作れないことを。 実作には、実作者なら…

色調

ゲイカップルとダウン症児の交流という設定が、『チョコレートドーナツ』(米国、トラビス・ファイン)では特異な印象を与えない。 柔和な色調の映像が、万人に理解されない者たちの哀しみを優しく包み込んでいる。

映像美

若い女性同士の恋。執拗な官能描写。これらを除けば、『アデル、ブルーは熱い色』(フランス、アブデラティフ・ケシシュ)は、青春のありふれた悲恋にすぎない。 だが、スタイリッシュな映像は、見ごたえがある。

活動家

東欧の民主化に寄与したレフ・ワレサ。活動家といっても、極端な生活をするわけではない。家庭を大事にし、労働運動でも地道に連帯を進めていた。 『ワレサ 連帯の男』(ポーランド、アンジェイ・ワイダ)は、彼の公私にわたる日々を、英雄視して持ち上げる…

役割

言葉の採集、監修、宣伝……。 辞書作りのスタッフは、それぞれ役割がある。 『舟を編む』(日本、石井裕也)は、主人公の編集者だけではなく、共同作業者しかり、配偶者しかり、支える者すべてが、役割を担って生きている。 見出し一つが抜ければ、辞書の機能…

労働

本当に、働くことというのは正しいことなのだろうか? この疑問に対する回答は簡単だ。労働に善も悪もない。 労働とは、ただ仕事をすること。それだけである。…… 僕たちは多くの他人を足蹴にしながら生きているという現実は知っておくべきだと言いたいのであ…

凡人の抵抗

奴隷ではないが、白人ほどの身分が保障されているわけではない。自由黒人は、奴隷として売られてしまえば、容易には身分を取り戻すことはできないのだ。 『それでも夜は明ける』(米国・英国、スティーブ・マックイーン)の黒人、ソロモン・ノーサップは、知…

語り手の相手

平野 伊坂作品には視点の変化など複雑な要素も入りますが、いつも読者が迷子にならないようになっていますね。リーダビリティは意識されているんですか?伊坂 いや、これは謙遜ではなく、僕ってあんまり読解力がないんですよ(笑)。飛ばし読みをしちゃうと…

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