2022-05-01から1ヶ月間の記事一覧

民族格差

『マイスモールランド』(日本・フランス、川和田恵真)のクルド人一家は、いつまで経っても難民資格を得られない。仕事も越境も制限され、これから先、難民として認定されるかどうかもわからない。異国に居住するのは、各国のニュースで大きくとらえられ、…

文学展の楽しみ

青年期まで接した英語ではなく、日本語での執筆。総理大臣だった父とのかかわり。三島由紀夫ら文士との付き合い……。『生誕110 年 吉田健一展 文學(ぶんがく)の樂(たのし)み』(神奈川近代文学館)は、工夫された構成で、酒や旅を愛した文人の痕跡を伝え…

健全な笑劇

別れたカップルと彼女たちの知人だけで構成される男女の交錯。いかにも小劇場的に完結した人間関係が俯瞰され、演劇のテキストのように事例が披露されるのだが、会話や場面展開の軽妙さによって、退屈さは一切ない。洗練された愛笑劇とでも言うべき五反田団…

言葉の衝突

語りの名手とも言うべき伊藤比呂美と町田康。『ふたつの波紋』(文藝春秋)で記録された両者の対話には、妥協もなければ、なれ合いもない。かみ合っていないからこそ、言葉の生々しさ、感覚のみずみずしさが、消えずに済んでいる。

兄弟の実験

商業性を無視できない音楽業界で、絶えざる実験性を続けながら、長年現役で活動するロン&ラッセル・メイル兄弟。『スパークス・ブラザーズ』(英国・米国、エドガー・ライト)は、幾多の音楽の源流とも言えるバンドの軌跡と魅力をたどる。

高齢の愛

認知症の母を介護するのは、90代の父。脳梗塞で入院した母に面会するため、毎日、病院を訪れる……。『ぼけますから、よろしくお願いします。 おかえり お母さん』(日本、信友直子)は、娘が撮った愛の記録だ。

再び奈落へ

猥雑さと豪華さの入り混じった世界。『ナイトメア・アリー』(米国、ギレルモ・デル・トロ)では、野心あふれる興行師が悪徳学者と組むが、曲者の大金持ちをだまそうとたくらんだのが運の尽きだった。栄光に酔いしれた彼は一転、見世物として、檻に閉じ込め…

どこまでも不運

彼は、拾った金を正直に返しただけだ。それが大変な善行だと、慈善団体やメディアに取り上げられたものの、債権者との和解交渉や、就職の成否といった現実を解決するわけではない。 『英雄の証明』(イラン・フランス、アスガー・ファルハディー)の服役囚は…

なぜ彼は?

タスマニア島の観光地で起きた青年の銃乱射事件。『ニトラム NITRAM』(オーストラリア、ジャスティン・カーゼル)は、奇異な犯人に免罪符を与えるわけではない。それでも彼を眺めるうちに、人からばかにされた彼の行動原理が理解できるようになる。不器用な…

アクセスカウンター