2009-01-01から1ヶ月間の記事一覧

上昇志向

強迫観念的な上昇志向に満ちた勝間(補・和代氏の)本が、なぜこれほど多くの人に受け入れられているのか、という謎は解けない。苦しくないのか、みんな。…… 自立を目標にすることが、自分の首を絞めることになるという、女の生きがたさのようなものを、私は…

喜劇的すぎずに

死んだと思っていた青年が生きており、女装して少女の目の前にいた。 『我が至上の愛 アストレとセラドン』(フランス・イタリア・スペイン)は、描き方によっては、爆笑劇になりかねないところを、エリック・ロメールならではの抑制と気品によって、まじめ…

認識

子役時代に出演した西部劇で、脚本家から虐待された二人の中年男。恨みを晴らすべく、脚本家の参加する野外上映会に向けて、車を走らせる。 表向きのばかばかしいストーリーとは裏腹に、『サーチャーズ2.0』(米国、アレックス・コックス)は、米国の映画産…

逡巡のあとに

貧しい国だけではなく、日本にもストリートチルドレンはいる。 権徹『歌舞伎町のこころちゃん』(講談社)は、歌舞伎町で父と路上生活をする4歳の女の子の写真集だ。 少女の窮状を知るあまり、撮影者が自身の立場を離れ、父を叱るが、父からは、どうしようも…

よい作家

あの人にとっては初期の作品群にあたる戦中と戦後初期の作品が、やはり本当におかしかった頃の作品なんだと思います。ボクが太宰治を本格的に好きだ、よい作家だと思ったのはその頃の作品なんですよ。『人間失格』以降くらいのいわゆる晩年の作品というのは…

手法の適性

アクションやドラマを抜きにして、戦争映画を撮るのは難しい。静の監督、アレクサンドル・ソクーロフは、どちらの要素も乏しい。 『チェチェンへ アレクサンドラの旅』(ロシア・フランス)は、ロシア軍駐屯地の孫兵士を祖母が訪ねるという設定だ。彼女は歩…

永久革命

ジョージ・オーウェル原作のアニメ『動物農場』(英国、ジョン・ハラス、ジョイ・バチュラー)では、人間から農場の経営権を勝ち取った動物たちが、革命後の指導者によって搾取され、再び革命に立ち上がる。 こうした動きに対し、革命をしたところで、支配・…

付き合いの幸福

『ラースと、その彼女』(米国、クレイグ・ギレスビー)の青年ラースは、いつも一緒に過ごしたリアルドールの死を経験することで、ようやく生身の女性と付き合えるようになる。 ラースの変化を精神の成長とか、心の治癒と考えるのが、一般人の見方だろう。 …

やる気

やる気がなくても、とりあえず掃除機を出せば掃除を始める。気が向かなくてもパソコンの前に座ってスイッチを入れたら、原稿を書き出す。……最初はなかったやる気。でも、いつの間にか作業をすることに夢中になっています。……しんどくっても、めんどくさくっ…

母性愛

『永遠のこどもたち』(スペイン・メキシコ、J・A・バヨナ)の母親は、孤児院育ちゆえに、人一倍、子どもをかわいがる。その子どもが館で行方をくらましたときの悲しみは、尋常ではない。 この母親と同じような境遇でも、子どもをひどく嫌う人もいるだろう…

生還後

地下鉄の構内に閉じ込められた人々が、元レスキュー隊員の指揮のもと、苦境を乗り切り、レスキュー隊に救助される。 『252 生存者あり』(日本、水田伸生)の彼らのように、決死の体験をすれば、現実を生きていく力が身に付くだろうか。 生存者は、重い事情…

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