2023-10-01から1ヶ月間の記事一覧

晩年の回帰

内モンゴル自治区でも都会と地方には格差がある。『草原に抱かれて』(中国、チャオ・スーシュエ)では、息子夫婦とアパートに住むようになってから、認知症となり、部屋に閉じ込められた母をミュージシャンの次男が連れ戻し、草原の家で暮らす。それでも母…

報道の本道

資金も機材も乏しく、要人に接触するつてもない。しかも、記者は全員、被差別階層の女性たちだ。『燃えあがる女性記者たち』(インド、リントゥ・トーマス、スシュミト・ゴーシュ)が記録した新聞社の記者が実行するのは、対象に直接会い、紙媒体やSNSなどを…

求めているもの

「中でも何が一番つらかったかといえば、嘘つき扱いされることでした。レイプそのものがなかったことにされ。嘘つき呼ばわりされる」 「対話してくる中で、気付いたことをたとえばひとつ挙げるとすると。かつて加害者となった方々のほとんどが、自分の被害者…

勢力

内田「加速度主義的な政治勢力は「社会的共通資本」を標的にする。大阪維新がまずやったのは公務委員叩き、それから公共交通機関の民営化、医療拠点の統廃合、そして学校の統廃合ですが、みごとに社会的共通資本だけを標的にしているのがわかります。……人間…

人間の現実

医療用通報装置の誤作動で呼び出された警官が、双極性を患う黒人の老人がアパートの部屋の鍵を開けなかったために、強引に押し入り、暴行の末、殺害する。管理会社のスタッフも彼の家族も、強行の前で話すすべもない。『キリング・オブ・ケネス・チェンバレ…

国葬

歴史的な評価や国民の合意が定まらぬまま、実行された儀式。『国葬の日』(日本、大島新)は、元首相の式典が開催された日に、事件現場の奈良、地元の下関、被災地の福島、基地問題で揺れる沖縄など、各地の人々を記録した。 国葬の何が問題なのか、認識する…

自然体

物書きになりたかったわけではない。体系的に材料を集めたわけでもない。『こんな感じで書いてます』(新潮社)は、会社勤めのかたわら、片手間にやっていた執筆を正業にした自然体の活動歴が綴られている。 友だちに語るように、書いてきた。原稿料で生計を…

国民の不平等

すべての老人が年金暮らしで悠々自適に暮らせるというわけではない。平舘英明『「人生100年時代」は幸福なのか』(『週刊金曜日』9月22日号)では、貯金や年金の少ない層が、長生きすることで、かえって生活苦にあえぐという現実が報告されている。現役時代…

母さんの恋

時代に合わせて、様々な恋愛を描く山田洋次。『こんにちは、母さん』(日本)では、高齢の母が、リストラや娘との関係に悩む息子をよそに、近隣の神父に思いを寄せる。結局、思いがかなわないとはいえ、ときめくことでの初々しさや微笑ましさは、年を超えた…

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