2024-07-01から1ヶ月間の記事一覧

地方の創生

人口問題を理由に、過剰な危機をあおる。問題の本質的解決を抜きにして、統合を進める。地元経済に見返りの薄いイベント類に資金を費やす……。地方の改革をうたう者には、得てして、この種の傾向が見受けられるが、木下斉『地方創生大全』(東洋経済新報社)…

映画としての人物

レーサーから転向し、自動車メーカーを経営するエンツォ・フェラーリ。息子を亡くし、共同経営者でもある妻との関係は悪化し、愛人との生活を非難された。会社の経営が危機に陥るなか、ロードレースにチームを参戦させる。 『フェラーリ』(米国・英国・イタ…

誠実な芸人

正体を知られたことで、人が遠ざかった芸人がいる。村本大輔は逆の存在だろう。誠実で真摯の人柄を知れば、笑いに込められた深さと熱い思いをいっそう実感できる。 『アイ・アム・ア・コメディアン』(日本・韓国、日向史有)は、地上波から消えた彼が、米国…

時代の別れ

『ふたごのユーとミー』(タイ、ワンウェーウ・ホンウィワット、ウェーウワン・ホンウィワット)は、一人2役と思わせない撮影と演技に加え、20世紀末をスケッチした青春映画としても、すぐれている。ある夏、仲良しの双子姉妹が、同じ中学生の少年を好きにな…

地方政治の橋渡し

統合後、衰退する市で、危機感と意欲がある故に市長は手続きを省略しての改革を急ぐ。早急な手法は古参の議員とのあつれきを生み、政策の立案をことごとく否決される。双方とも、一部の報道や動画などではうかがえないそれぞれの主張があり、理念とプロセス…

会話劇の実験 

『WALK UP』(韓国)は。同じ主人公が4階建てアパートで、いつどの部屋にいるかで、タッチもエピソードも変わる。いつもながらの会話劇でありながら、作品ごとに違う実験性があるのが、ホン・サンスだ。

救えなかった命も

株の仲買人として、優雅に生活していた青年が、ナチスの台頭する中、ユダヤ人難民の子どもたちを列車で里親のもとに避難させる。命を救えたのは、死者の一部にすぎず、ニコラス=ウィントンは、老いてからも負い目は晴れなかった。そんな彼がテレビ番組を通…

終わらない決着

夫が深夜に異常な行動をする。夢遊病なのか、悪霊によるものなのか。『スリープ』(韓国、ユ・ジェソン)は、最後まで明確にしない。夫婦のどちらの視点に立つかで、ホラーにも見え、ブラックコメディにも見えるだろう。 同じアパートに住んでいた老人の恨み…

映画の個展

工場のような巨大な敷地に並べられた膨大な絵画やオブジェ。アンゼルム・キーファーは、自転車で構内を移動する。熱い液体をぬりたくる実作も大がかりだ。 手に取れる画集や小さなギャラリーでは感じ取れない質感や迫力が、大画面の最新映像では感じ取れる。…

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