2017-03-01から1ヶ月間の記事一覧

アメリカン・ドリーム

『SING シング』(米国、ガース・ジェニングス)のメンバーは、落ちこぼれぞろいだ。 支配人は、資金不足で劇場が閉館間近。オーディションに集う動物たちも、意欲だけあって、うだつの上がらない者ばかりだ。それぞれ事情を抱えるが、みんな才能があった。…

日本人の快感

安倍政治の本質は「勘ぐらせる政治」である。これは特定秘密保護法や共謀罪と連動して、いずれ市民に刃が向けられる。権力に対する自発的服従を生み出す」(中島岳志『安倍の「勘ぐらせる政治」』(『週刊金曜日』3月24日号) 安部政治に限らない。責任の所在…

少女の死

観る者にイライラ感をもたらすほど煮え切れない少年。『牯嶺街少年殺人事件』(台湾、エドワード・ヤン)は、彼が最愛の少女を刺殺するまでの背景を長尺で描出する。 日中の影を踏まえつつ、少年少女の青春と、台湾の世相を浮き彫りにしただけではない。原理に…

ゲゲゲの伝言

『追悼水木しげる ゲゲゲの人生展』(松屋銀座)は、漫画の原稿以外にも、スケッチや妖怪像などが集い、水木の旺盛な好奇心と創作の痕跡が一望できる。 全体像から伝わるのは、存在する者の殺伐とした死でもなければ、おどろおどろしさでもない。たくましい生…

魂の深さ

かつて水俣では、学校帰りの子どもが道ばたのおばあちゃんに「こんにちは」と言うと、おばあちゃんはその子の目をじっと見つめて、この子は魂の深か子じゃねえ」と言って、魂をほめてあげたものです。社会的な位ではなく、魂の深さが人の評価の対象だったの…

差別に向けて

白人と黒人。禁じられた異人種の婚姻を認めさせたのは、二人のひたむきな愛と、弁護士の正義感だ。 『ラビング 愛という名前のふたり』(英国・米国、ジェフ・ニコルズ)は、差別政策のもてはやされる現代にこそ、訴えるものがある。

旅心

台北・高雄・沖縄本島。 『百日告別』(台湾トム・リン)は、交通事故で最愛の人を失った男女それぞれが、死者とゆかりのある地を訪ね歩く。 エピソードは定番だが、爽快な映像が旅心を誘う。

汚職の地

腐敗する国家で成功するには、汚職に手を染めるしかない。 『エリザのために』(ルーマニア・フランス・ベルギー、クリスティアン・ムンジウ)は、娘思いの父が、思いゆえに空回りする現実を冷徹に見つめる。 登場する家族は、だれもがいやな部分を持つが、…

偉人

カメラに向けて、つぶやきつづける種苗店主。郷土史の造形もさることながら、津波で被害を受けた陸前高田の実状を伝えるため、外国語を学んで体験談を出版するという強者だ。 『息の跡』(日本、小森はるか)は、無名の偉人の姿をひたすら撮っている。偉人は、…

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