2024-09-01から1ヶ月間の記事一覧

合衆国の一端

アクション映画のようなタイトルだが、『ナイト・スリーパーズ ダム爆破計画』(米国、ケリー・ライヒャルト)が描くのは、サスペンスでも環境問題でもない。元軍人、農家の青年、裕福な少女というメンバーによる環境保護のための運動が、無関係な住民の死を…

あのときの記憶

福島県相馬郡新地町。人を失い、風景も変わった。時を経ても、津波の記憶は消えない。『なみのこえ 新地町』(日本、酒井耕・濱口竜介)が残すのは、人々の肉声だ。

ある時代の妻

タイトルどおり、『チャイコフスキーの妻』(ロシア・フランス・スイス、リル・セレブレンニコフ)の主役は、天才作曲家としての夫ではない。偏屈で非情な夫に、幻想だけを求めた彼女が、もし多様な生き方が認められる時代にいたならば、別の物語が生まれた…

ジェンダー問題の結末

津田環『セクシー田中さんとジェンダー問題』(『世界』9月号)で指摘されるのは、テレビ局と出版社のテーマに対する誤解と、コミュニケーションの不足だ。ドラマ化によって、一番重視したことの根幹を変形されたにもかかわらず、作者が責任を求めたのは、メ…

あのときのメッセージ

宮藤官九郎の『新宿野戦病院』(フジテレビ系)は、歌舞伎町の救急医療と、かいわいの警官、NPO職員をまじえた長屋物的な喜劇だが、終盤、疫病蔓延後の世界や、善人の裏面を取り入れたことで、もう一つ上のドラマになった。あのときの忘れてはならないメッセ…

彼女の解放感

職場であれ、友人や恋人・夫との関係であれ、『ナミビアの砂漠』(日本、山中瑶子)のカナは、標準的とされる態度は、いっさい取らない。21歳の彼女が、心惹かれる世界は、都会でも避暑地でもなく、異国の画像だ。 ときにエキセントリックで、突拍子もないよ…

労働現場の抗議

複数のテレビドラマのキャストがそのまま登板ということもあり、『ラストマイル』(日本、塚原あゆ子)は、オールスターが揃うが、物語自体は、群像劇として、破綻なく収束している。ECサイト向けの巨大な配送センターを標的にしたテロ事件をリアルに活写し…

プロフェッショナル

食材選びから接客まで。『至福のレストラン至福のレストラン 三つ星トロワグロ』(米国、フレデリック・ワイズマン)で紹介される家族経営の一流フランス料理店は、携わる人々全員がプロフェッショナルだ。客の好みやアレルギー、会席の目的を知った上での料…

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