2011-04-01から1ヶ月間の記事一覧

交流

別居中の親子が久しぶりに交流する。 俳優の父と11歳の娘。日光浴や卓球を楽しむ。 やがて、別れのときが……。 『SOMEWHERE』(米国、ソフィア・コッポラ)には、ストーリー中心のドラマとは質の違う心地よさと、寂しさがある。

小説の変革

小説は、そもそも書くのにも読むのにも、とても時間がかかるものなのだった。目の前の出来事にたいしては即効性を発揮できないかもしれないけれど、それでも、そのぶん時間をかけてゆっくりと人の深いところに降りてゆき、本人にも気づかれないような静けさ…

自粛

「純粋な鎮魂の気持ちを、自粛って方向で、ひょいって簡単に解決されちゃうのがおもしろくねえんだ。なぜ東北の人たちがあんなに死んでオレが生き残ったんだ、何をすればいい、わからない、っていう迷いを持ち続け、ひとりひとりが己なりのやり方を探すのが…

家族の力

薬物中毒の兄、たかり屋の母……。才能のあるプロボクサー、ミッキー・ウォードにとって、家族は負担でしかない。だが、チャンピオンを勝ち取った原動力も、家族だった。 実在のボクシング一家を物語る『ザ・ファイター』(米国、デヴィッド・O・ラッセル)に…

人間も世界も

既成作品の成功を真似てうまく書こうとするからつまらないものにしかならない。小説のおもしろさは、うまさや完成度にあるのではなく、不器用さや不格好さにあり、そこに作者の試行錯誤の痕跡がある。試行錯誤とは楽観的思考の形跡のことであり、芸術のその…

本物の言葉

大震災以来、「言葉を失いました」とか、(この惨状を前に)「言葉もありません」というのが多くの人の合言葉となった。 だが、どのような場合にも、言葉を見つけ出してなにかを言うのが、もの書きの因果な宿命なのである。(岡井隆「大震災後に一歌人の思っ…

言葉ではなく

少女と老手品師の甘く辛い触れ合いを描くアニメ『イリュージョニスト』(英国・フランス、シルヴァン=ショメ)。 魅惑的な背景画が、見る者を陶酔させる。ホテル・丘・田園・店・通りなど、二人の歩く場すべてが、はかない人生を補うべく、美しさを誇ってい…

文学の力

震災後、佐伯一麦は仙台のマンションで語った。 月も星もそう。変わらないものを見つめて、日常を取り戻していくしかないのかもしれません。それを描くのが文学の仕事なんだと思います。(『朝日新聞』4日朝刊) 文学には、今現在うしなわれたものを、再生す…

災難こそ人生

一難去ってもまた一難。『シリアスマン』(米国、コーエン兄弟)のユダヤ人、大学教授には、家庭でも職場でも、次々と災難が降りかかる。 極端な人生が絵空事とは思えないのは、われわれの人生も、同じだからだ。 それでも、生きていられるだけ、ましなのか…

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