2020-08-01から1ヶ月間の記事一覧

個人的な戦争

遺作にして異色作。雑文でもあり、映像実験でもある。『海辺の映画館』(日本)は、故郷・尾道の古びた映画館を舞台に、大林宜彦が変遷する商業映画のスタイルを活用しつつ、戊辰戦争から原爆投下前夜までの戦争の歴史をたどる。 戦争のとらえ方は、監督個人…

劇場という場

さえない劇作家と、彼に振り回される女。二人の限りある時間を綴った『劇場』(日本、行定勲)は、実在の場所をモデルにして役者を使う映像によって、原作の古風な感覚に、いらだちと、心地よさが、付与されている。 別れるべくして別れた二人。再開の場は、…

人間の姿

『リトル・ジョー』(オーストリア・イギリス・ドイツ、ジェシカ=ハウスナー)では、実験室で作られた花の花粉を嗅いだ人々が、みな楽天的な性格になる。くよくよ悩んでいたことがどうでもよくなり、我慢していたことからも脱却する。 母も息子も、研究所員…

AIの未来

人間の指示に忠実なAIは、人間の指示に左右される。AIで可能な範囲が広がるほど、指示の内容が重要になる。 宮藤官九郎作の短編ドラマ『JOKE~2022パニック配信!』(NHK)でスマートスピーカーやロボットを使いこなすのは、漫才タレントだ。相方ほどの活躍…

娘に託したもの

娘が子役のオーディションに受かるために奔走する。『ベリッシマ』(イタリア、ルキノ・ヴィスコンティ)の母親は、あまりにも饒舌で、あまりにもエネルギッシュ。情熱の裏には、うだつの上がらない生活を変えたいという必死の思いがある。 審査時の失敗が不…

母と子

自力で働くことも、子どもに教育を受けさせることも、かたくなに拒む母。それにもかかわらず、『MOTHER マザー』(日本、大森立嗣)の子どもたちは、ずっと母親についていく。 母と子の間には、世間一般の幸福家族にはない結びつきがあった。少なくとも、母…

メダルの代償

『オーバー・ザ・リミット 新体操の女王マムーンの軌跡』(ポーランド・ドイツ・フィンランド)は、ロシアの新体操選手、マルガリータ・マムーンが金メダルを獲得するまでのドキュメンタリー。 指導者イリーナ・ビネルの叱責は、選手の人格を破壊しかねない…

Go To

Go Toトラベル」キャンペーンは、実は「Go Toトラブル」キャンペーンだ。そのような指摘が、自民党の内部からさえ出てきているという。(「浜矩子の経済私考」-『週刊金曜日』7月31日号) 利用する観光客も、受け入れる宿泊施設も、本当に援助を必要とする…

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