2021-10-01から1ヶ月間の記事一覧

彼らの救い

万引きして逃走した少女が、スーパーの店長が追いかけられたため、車に轢かれて死んでしまう。『空白』(日本、吉田恵輔)の登場人物は、遺された父親を含め、それぞれ事情をかかえている。被害者も加害者も親族も、相手の内面が見えないことで、おびえたり…

伝説のライブ

交通が不便、会場の居心地も決して快適とは思えない野外に、二日間で25人を動員させたライブ。『オアシス ネブワース1996』(英国、ジェイク・スコット)は、25年経ってもなお、強烈な記憶を人々の心に刻み込んだ伝説の熱気を、当時人気絶頂だったバントの演…

疫病神

開拓使時代の女性ガンマンだが、男性的な武力を優先させるわけでもなければ、しとやか女性像に従うわけではない。ヒロインが疫病神と言う呼称を肯定的に引き受ける『カラミティ』(フランス・デンマーク、レミ・シャイエ)は、従来のカラミティ・ジェーン像…

戦争は続いている

昨日まで同じ町で暮らしていた人間たちが敵対し、生かされ者と、殺される者とに区別される。国連軍とて、住民を守ってくれない。教師だった通訳が、自分の家族だけを守るために、なりふり構わぬ行動に走るのも、致し方ないことだろう。『アイダよ、何処へ?…

真実の追究

ドキュメンタリーディレクターが女子高生いじめの真相を追う。冤罪と思われた教師の実像。視聴率狙いのテレビ局の歪曲。真実を至上とするディレクターの身内にも、許すべからざる事態が明らかになる。『由宇子の天秤』(日本、春本雄二郎)は、単純化できな…

永遠の難民

タリバンに死刑を宣告された監督が、アフガニスタンを出国。家族を連れ、各国をさまよいながら、ヨーロッパまで脱出する。『ミッドナイト・トラベラー』(アメリカ・カタール・カナダ・イギリス、ハッサン・ファジリ)は、道中をスマホで撮影したものだ。 砂…

鯨と生きる

鯨が信仰そのものになっているインドネシア・ラマレラ村。捕鯨での収穫がなければ、村人は食えないし、漁で命を落とすこともあるが、鯨と共に生きていくしか道はない。『くじらびと』(日本、石川梵)には、30年間、村民と交流を続けた撮影者ならではの、貴…

実験の効果

さえない高校教師たちが、勤務中に適度の飲酒をする実験が効果を奏して、授業が活気を帯び、生徒の評判も良くなるが、漁を増やすうちに、奇行が目立つようになり……。『アナザーラウンド』(デンマーク、トマス・ビンターベア)は、一種の教訓物語と言えるが…

正気であり続けること

文月悠光の詩『パラレルワールドのようなもの』(『現代詩手帖』9月号)では、一年前の「私」が現在の私の手を引き、新国立競技場を目指して走り出す。無観客の喝采を浴びながら、公衆トイレに駆け入り、消毒ペダルを踏む。

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