2010-09-01から1ヶ月間の記事一覧

少数派の戦略

わずか十三人の侍が、三〇〇人の軍勢を迎え討つには、どうするか。 リメイク版『十三人の刺客』(日本、三池崇史)では、落合宿での力戦よりも、刺客が知恵を絞る前半のほうが、興味深い。 少数派ゆえの戦略は、現代でも示唆に富む。

準備と破壊

ハプニングは監督の中で想定内ではあったが、実際に誰がどのように動くかなんて演出しきれるはずがない。事件を予想しつつ、流れをコントロールしない。だからこそ映像に臨場感が増す。 (松江哲明『セルフ・ドキュメンタリー』河出書房新社) ドキュメンタリ…

他者

殺人を犯した青年も、メル友や祖母にとっては、大切な人間だ。一人の人物が、どうでもいい相手なのか、そうでない相手なのかは、受け手によって異なる。 殺人犯とメル友の女が逃避行をする『悪人』(日本、李相日)。力点は善悪の評価ではない。他者を見るス…

おまじない

月子の母が突然連れてきた年下のヤンキー青年。近所の大家や町医者。みんな人情的だ。 『オカンの嫁入り』(日本、呉美保)は、一見、ファンタジーにも見えるが、月子は、外の冷たさも体験している。 会社ではストーカーまがいの同僚に脅され、彼のためにも…

小説と美談

小説はもともと美談を好まない。百万円はいつてゐる財布を拾って交番に届けました、なんて話は書かない。書いたつていいけれど、誰も読まない。彼と彼女は結婚して、一夫一婦制の伝統の確立のため努力して一生を終へました、なんて話は書かない。むしろ逆の…

歴史のバトン

倉本聰の脚本によるドラマ『歸國(きこく)』(TBS)では、南海で玉砕した英霊たちが、終戦記念日に東京を訪れ、変わり果てた日本の姿を嘆き悲しむ。 劇中の英霊たちは、戦時の日本人こそが正しく、現代の日本人こそが誤まっているという主張に固執している。…

希望の心得

未来社を経て、影書房を設立した編集者の松本昌次は、現代の出版界を危惧する。 変な希望は持たないほうがいいというのは、たとえばわたしが十代だった戦争中の経験でもあるんです。その時代は、まちがってはいたけれど、少なくとも希望を持っていたわけです…

生きている間

年齢と共に、実作者としての活動量が減っても、藤子 不二雄Aの情熱は衰えを知らない。エッセイ漫画『PARマンの情熱的な日々 漫画家人生途中下車編』(集英社)では、パーティー、ゴルフ、散策など、生きている間を目一杯楽しもうと、精力的に動き回る日…

持続力の源泉

大作『七人の侍』を完成させるには、情熱と昂奮状態を長期間持続する必要があった。 『黒澤明「七人の侍」創作ノート』 (文藝春秋)のあとがきで、解説担当者の野上照代は、黒澤の言葉を回顧する。 黒澤監督はたしかにこう言っていた。 「一時的に爆発する…

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