2010-07-01から1ヶ月間の記事一覧

無理解な断罪者

異文化を理解せず、最初から否定的な態度で迫られると、拒否反応を起こすのが自然な態度である。横暴な接触を続けられた漁民が、外国スタッフの撮影取材を拒むようになったのは、そのような経緯があったためだ。 『ザ・コーヴ』(米国、ルイ・シホヨス)では…

すべてが夢

潜在意識に産業スパイが入り込む『インセプション』(米国、クリストファー・ノーラン)。 仕掛けが凝っている割に緊迫感がないのは、どんなにスリルや謎がちりばめられていても、すべてが夢にすぎないからである。夢の中では、なにが起きても不思議ではない…

借りでない暮らし

監督こそ、若手の米林宏昌だが、『借りぐらしのアリエッティ』(日本)の脚本は、宮崎駿。にもかかわらず、家を追われたアリエッティが実にあっさりと引越ししてしまい、映画も終わってしまう。 自ら物を作るわけではなく、借り物で暮らしている限り、定住の場…

惨劇の発砲先

同列に近い仲間は疑って殺し合うが、上層部は決して疑わない。 『アウトレイジ』(日本、北野武)のヤクザたちは、間抜けな姿勢に徹している。だからこそ、残忍な抗争が、滑稽味を帯びるのだ。 グロテスクな惨劇の発泡先は、ヤクザではない。不信感を口にし…

何かが始まる

大統領選で不正がまかりとおり、抗議デモが発生したイラン。 『世界報道写真展2010』(東京都写真美術館)の写真には、政情不安定のなか、深夜の屋上から抗議の言葉を叫ぶ女性が写っている。 ピエトロ・マストゥルツォ(イタリア)のグランプリ受賞作は、「何か…

都市と怪物

簡素なたたずまいをしていながら、細部に目を凝らしてみると、そこにとてつもなく複雑な世界が隠されているというような都市を、つくりだしてみることはできないだろうか。現代の高度に管理された都市に、怪物的なものを生息させることのできる方法はないも…

作家と政治

発表前に小説の原稿を渡して、チェックを依頼するほど、ノーベル賞作家は、政治家を信頼していた。 二人の結びつきが、『絆と権力 ガルシア・マルケスとカストロ』(アンヘル・エステバン、ステファニー・パニチュリ、野谷文昭・訳、新潮社)に、詳述されて…

常識社会

大衆を利用する立場になった大相撲は、大衆の倫理観から逸脱することが不可能になった。力士にも社会常識が要求され、横綱には品格なるものが義務付けられる。 芸能の魅力というのは、一般の常識社会と離れたところの、遊びとしての魅力じゃないでしょうか。…

物語の発掘

はじめは自分のなかにドラマや物語性はないと思っていたから、何かありそうな場所を選んで、とにかく足もとを黙々と掘っていくしかなかった。それを続けているうちに、足腰が強くなって、物語をより多くより長く引っ張り出せるようになりました。その物語と…

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