2024-06-01から1ヶ月間の記事一覧

骨の持ち主

米軍基地用の埋めに立てに使われようとしているガマの土には、いまだに遺骨が眠っている。手榴弾や火炎放射器によって散乱し、泥にまみれた骨をすべて掘り返して遺族に戻すのは、容易なことではない。『骨を掘る男』(日本、奥間勝也)は、自力で骨を掘り、…

集団の恐怖

職務熱心な新任の中学教師が、盗難の犯人を突き止めるため、職員室で盗撮を試みたところ、意外な犯人を突き止める。ところが被疑者の息子が生徒だったため、親の罪を張らべく、教師に復讐を企てる。 『ありふれた教室』(ドイツ、イルケル・チャタク)の一事…

少女が死んだ理由

麻薬と売春の常習犯で、自殺した少女。そうなったのは、相応の事情がある。 『あんのこと』(日本、入江悠)は、彼女を断罪するわけでもなく、道を踏み外さざるを得なかった過程を丹念に綴っていく。家庭環境に恵まれなくても、立ち直るべき機会はあった。支…

スペクタクル

『マッドマックス フュリオサ』(米国、ジョージ・ミラー)は、女戦士の若き日の物語。神話性といい、アクションといい、旧作を知らずとも楽しめるだろう。砂漠地帯の統一された色調と、だれることのない戦闘は、スペクタクル映画の期待を裏切らない。

映像のコンサート

闘病による体力低下に配慮し、1曲ずつをスタジオで収録し、のべ20局で構成したコンサート映画。『Ryuichi Sakamoto Opus』(日本、空音央)は、音楽家の一つの音、一つの動作とも、込められたものをもらさまいとする緊張感と敬意に満ちている。映像自体に、…

規制緩和

一般に境界領域は、適用されるルールが曖昧になりやすい。そこになんらかの力や思想が作用すると、通常では考えられないような、異常なできごとが起こるのではないか。(神里達博「紅麹」サプリ事件の真相―『世界』6月号) 医薬品でもトクホでもないために、…

当事者

幼い娘が失踪し、行方を捜して、母親は必死になる。ビラをまき、テレビ番組の被写体となり、警察にもたびたび懇願し、手掛かりを見つけたとなれば、いたずら電話に飛びつく。 『ミッシング』(日本、吉田恵輔)で石原さとみが熱演する母親は、鬼気迫るが故に…

権益を増強するために

民間企業の幹部が政府の要職を務め、自国と属国の軍部を使って、自社の権益を増強する政策を推進する。都合の悪い政府は、他国であっても、クーデターで支配下におさめる。米国のこうしたやり方は、過去も今も変わらない。 伊藤千尋『反米大陸-中南米がアメ…

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