2008-05-01から1ヶ月間の記事一覧

問いかける

これは問いかける映画なんです。私が内包している様々な疑問、直面していることに対して、ぜひ問いかけてみたかったのです。なぜ、ここまで歴史認識のギャップが大きいのだろうか。……靖国という巨大な舞台……には、いろんな人物が登場している、いろんな現象…

優れた文学

《世の中にはよいものがあるのだ》という確信とか、《自分は美しいものをつくり出すのだ》あるいは《世の中の真実を揺るがせにしないのだ》というものが、エンターテインメントにはあると思います。一方、《そういったものはないんだ》とはっきりいってしま…

とるに足りること

とるに足らない人もとるに足りないことも実は一つもなくて、とるに足らないとみんなが決めつけて、なかったことにされている。それをすくいあげるのって、すごく大事なことだと思う。(岸本佐知子談『ダ・ヴィンチ』6月号) では、とるに足りることとは?

出口

渡辺源四郎商店の公演作品『ショウジさんの息子』(アトリエ春風舎)は、家庭内の深刻劇だ。 亡き妻の父親と暮らす真佐彦。80歳の誕生日を迎えた義父から、家の相続書類をもらったが、固辞する。 代わりに、極秘で進めていたことを義父に明かした。老人ホー…

作者

岡本太郎がアトリエでキャンバスに絵筆を叩きつけると、夫人に色を指示される。書斎で言葉を発すると、夫人が口述筆記する。(瀬戸内寂聴『奇縁まんだら』日本経済新聞出版社) それは合作といってよかった。その点を(補・岡本太郎に)問うと、 「芸術作品…

仕事

耳男と呼ばれる匠は、耳を切り落とされた際、見物していた夜長姫の笑顔が忘れられない。その笑顔に打ち勝つため、蛇の生き血をあおり、小屋の天井に無数の蛇をつるす。頼まれたミロク像ではなく、バケモノの像を彫るためだった。 近藤ようこの『夜長姫と耳男…

リアリズム

マジックリアリズムは単なる文章表現上の技法ではない。それはひとつの世界の見方でもある。(柳下毅一郎『シネマ・ハント ハリウッドがつまらなくなった101の理由』エスクァイアマガジンジャパン) 世界の数だけ、リアリズムも存在するだろう。

失敗作とて

優れた表現者の習作や失敗作には、同じ作者の傑作からは読み取ることのできない作り手の息遣いが感じられる。何がしたかったのか。才能をどう使おうとしたのか。何故、充分にはうまくいっていないのか。……学びたかったら傑作に触れるべきという意見だけが正…

戦死の意識

『さよなら。いつかわかること』(米国、ジェームズ・C・ストラウス)の夫は、妻を突如失う。彼女は陸軍の軍曹であり、赴任先で戦死したのだ。 家族の悲しみは理解できるが、妻の戦死を夫がまったく予期していなかったとすれば、不自然な気もする。職業軍人…

年代論

「結局80年代はなんにもなかったんだ」とか「バブルといっしょにはじけて消えた、うわっついた時代だった」とかいわれてるわけでしょ。それもまぁ、わかるにはわかるんだけど、でもやっぱりそんなふうに総括されてしまうと、こっちとしては「いや、そんなこ…

強くなる

中国で台頭しつつある、いわゆる新中流層の人々にとって、いまは希望あふれる時代だが、同時に不安も抱えている。……変化のない社会主義国で生まれ育った人々にとって、自由はかならずしも解放ではなかった。遅れをとりたくなければ、必死で走り続けなければ…

顔つき

『うた魂♪』(日本、田中誠)の女子高生、かすみは、歌うことが大好きだった。ところが、好きだった男子生徒に合唱のときの顔つきを笑われてから、歌うのがいやになってしまう。 通常、歌うときの顔をばかにすることはないだろう。スポーツのときも、激しい顔…

雑種画

東と西。夢と現実。 混在する文化や体験が、決して調和の取れないまま、存在する。 横尾忠則の創り出す雑種画の世界(世田谷美術館『冒険王・横尾忠則』)は、おそろしく日本的であり、おそろしく脳内的なのである。

詩をよむ

散文の根幹をなす文章のエッセンスが詩歌だ、ということもできるのではないか。そのことを認識していたから、森鴎外や夏目漱石、樋口一葉や島崎藤村をはじめ、近現代文芸史上重要な小説家たちは、ほとんど例外なく、出発以来詩歌を試みるか、試みないまでも…

釣師

……リアリストである井伏鱒二は釣師が魚の性質をありのままに認めた上で現実的にそれに対処するのと同じように、言葉の……我儘を許し、物語を作りたければ作らせた上で、その物語ごと絡めとって素知らぬ顔で一廻り上手の物語を作る材料にしてしまう術を覚えた…

少年期

『パラノイドパーク』(米国・フランス、ガス・ヴァン・サント)の少年は、警備員殺しのてん末を書いた手紙を焼き捨てる。 結局、犯行をだれにも明かさないまま、映画は終わるが、いつかは、その罪を明かすことになるだろう。 少年期のやましさは、生涯、つ…

イメージ

都市に花が舞い落ち、黒犬の影が浮かび上がる。 大岩オスカールの絵(東京都現代美術館『大岩オスカール 夢みる世界』)は、それが暗い予感を具現するものであっても、強引なイメージで世界を作り変える楽しさに満ちている。

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