2013-08-01から1ヶ月間の記事一覧

想像写真

サハリン島・国際諜報団密会場所……。 説明的ではない『米田知子 暗なきところで逢えれば』(東京都写真美術館)の写真群は、見る者に想像の光を開放する。

紛争の果てに

支配層に抵抗し、独立運動を進める者も、平和的とは限らない。 犠牲になるのは、女たちだ。給仕係を強要され、レイプまでされてしまう。 『最愛の大地』(米国、アンジェーナ・ジョリー)は、ボスニア・ヘルツェゴビナの紛争で敵味方に分かれた男女が、収容…

小国の政治手腕

発言力の乏しい弱小国にとって、国家水没を防ぐには、手の内をさらしてまでも他国の共感を得て、温暖化対策を国際会議で訴えるしかない。 『南の島の大統領』(米国、ジョン・シェンク)は、使命感にあふれた若き大統領の奮闘ぶりをドキュメントする。

家庭内争議

金を使い込んで、実家を去った兄。戻ってきたときはホームレスになっていた。就職のあっせんで弟夫婦や親類に世話を焼かせるうちに、一族の対立をあらわにする。 優雅に見えるライフスタイルこそ、隠れた部分が表面化したときのギャップは甚だしい。 二兎社…

美の世界で生きるために

美しい映像を眺め、身をゆだねていればいい。 『トゥ・ザ・ワンダー』(米国、テレンス・マリック)に、言葉や葛藤は無用だ。世俗的なものが生じた途端に、夫婦は別れ、牧師は町を去らなければならない。 宗教画のような美しい世界に存在するためには、俗な…

日本の歴史

終戦後も、責任者がはっきりしないまま、国体を護持する日本。『終戦のエンペラー』(米国、ピーター・ウェバー)は、米軍准将が、天皇と政府関係者の調査を通じて、日本的不条理に迫る。 肝心なことが記録されず、各々の記憶と見方に頼る日本。歴史的な決断…

完成以前

『エヴァンゲリオン展』(松屋銀座)では、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』3作を中心に、イメージボード・絵コンテ・原画など生の資料が公開されている。実作者向けのプロセス公開というよりは、固定ファン向けの展示である。 ファンであれば、完成以前の状態…

絵画のような写真

写真でありながら、絵画のような……。スーパーの陳列棚や、汚れた川の水面でさえ、角度を変えてとらえれば、抽象画のようにさえ、見えてしまう。 『アンドレアス・グルスキー展』(国立新美術館)の写真群は、現実の意外な見え方や、殺風景な物の思いがけぬデ…

大人に向けて

自分を信じなければ、行動はできない。信じすぎれば、他人を不幸に巻き込んでいることに気付かなくなる。 人間が生きることの不条理を自覚しつつ、宮崎駿は『風立ちぬ』(日本)を提示した。 大人と子どもとの補助線は組み込まれているが、純然たる子ども向…

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