2018-11-01から1ヶ月間の記事一覧

ワインの味

『おかえり、ブルゴーニュへ』(フランス、セドリック・クラピッシュ)は、事情をかかえた3兄弟が、父の死後、実家の農園でワイン作りに挑む。 ブドウの収穫、繊細な醸造……。仕上げの選択も、作り手次第だ。 複雑な味は、作り手の個性が反映されるのである。

言葉の覚悟

『筒井康隆展』(世田谷文学館)は、作家の仕事ぶりを視覚に訴える企画展だ。一時期の断筆時代をものともせぬ膨大な仕事量が圧巻だ。一級の役者や音楽家としても活躍した筒井の多彩な才能は、今日の芸人を、質量において、はるかにしのぐだろう。 執筆量は多…

時空を超えて

風景でありながら、風景を超える。描かれた筆致よりも、更なる奥行きがある。 『生誕110年 東山魁夷展』(国立新美術館)の画は、人を立ち止まらせ、時空を超えた思索へと誘う。

映像の緊迫感

若いうちの一時期しか稼げないモデル業。その間に仕事を得るためには、容姿とセンスに加え、売り込み能力や運も必要だ。ドキュメンタリー『モデル』(米国、フレデリック・ワイズ)は、モデルも、彼らを使うスタッフやエージェントも、始終真剣である。映像に…

人間の強欲

伝説の怪作『グリード』(米国、エリッヒ・フォン・シュトロハイム)は、節度のない人間たちがいがみ合う濃密な悲喜劇だ。 成り上がりの夫も、守銭奴の妻も、裏切者の友も、もとは小鳥一匹殺せない小市民だった。変貌は、他人事とは思えない。彼らの強欲は、人…

演劇の時代

青年団『ソウル市民』(こまばアゴラ劇場)の切迫感は、劇団員が年を取り、再演の完成度と重厚さが増したためだけではない。日本がかかえる対外諸国との関係が、よりリアルで、多面的になったためでもある。 演劇は時代を再現し、時代を予見する。

多民族の町

167の言語が話され、多民族国家の代表とも言えるジャクソンハイツにも、開発の波が押し寄せ、マイノリティーが移住を余儀なくされている。そんな町でも、人々が集会をしたり、抗議運動を起こしている。 『ニューヨーク、ジャクソンハイツへようこそ』(米国・…

トランプを勝たせたもの

なぜトランプが選挙に勝てたのか。あるいは、なぜヒラリーが負けたのか。『華氏119』(米国)は、マイケル・ムーアが、選挙前の動きから民主党に抜けていたものを映し出す。 オバマとて、スピーチは立派でも、政策の実態は、欠如していたものも少なくなかった…

自然な死

寿命を察して、死を迎えるまで過ごす聖地。ガンジス川のほとりにあるバラナシだ。 『ガンジスに還る』(インド、シュバシシュ・ブティヤニ)は、息子が父を連れて、施設で最後の時間を共にする。悲壮感はなく、ユーモラスでさえある。インド人の息子とて、ギ…

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