2016-01-01から1ヶ月間の記事一覧

ゆるい味わい

新旧落語家の特別な高座をめぐるてんやわんや。 『の・ようなもの のようなもの』(日本、杉山泰一)は、ゆるい笑いをじわじわとしみこませ、復活した落語家同様の味わいを感じさせる。

ある渓谷の物語

フロベールの『ボヴァリー夫人』を現代に置き換えた『アブラハム渓谷』(ポルトガル、マノエル・ド・オリヴェイラ)は、夫人のエマがどれだけ性愛に奔放であろうとも、自分を見失わないのに比べ、俗っぽい周囲の男たちは、振り回されるだけで、どこか頼りな…

絶望と希望

彼が亡くなったとき、お嬢さんのナジュラ・サイードさんが、「とうとうサイードは亡くなりました」という手紙を下さいました。亡くなったその日のうちに書かれたものだと思います。そこに「父は、絶望的と言ってもよいほど悲観的な状況にありながら、希望を…

モチーフは過去

小川 「男はつらいよ」もそうですけど、ご自分の世代より遡ったところに創作の材料を見つけていらっしゃる感じですね。小説にするために、時間が必要になってくるからでしょうか。滝口 その感覚はあります。同時代の者はまだ位置づけが安定していないところ…

影のない社会

相手が誰であれ、生活手段や法的権利さえ、奪うことを許すべきではない。 誰かの行き場をなくせば、やがて、自分たちの首も絞めることになろう。 『ヤクザと憲法』(日本、ひじ方宏史)は、生活の場や訴訟手段でさえ、失いつつあるヤクザの実態を、密着撮影…

揺らぎ

離婚裁判後、温泉に行った友人が突然失踪。彼女の友人である3人の女も、思いがけない行動に走る。 『ハッピーアワー』(日本、濱口竜介)は、神戸を舞台に4女性の心の揺らぎを描く。相容れない男たちにも、奇妙な存在感がある。

物の継承

特別展『始皇帝と大兵馬俑展』(東京国立博物館)では、始皇帝関連の文物と兵馬俑が展示されている。 大量の兵馬俑が残された真意は推測するしかない。死後もなお、始皇帝が自分の理想を残すには、物と同時に、意図を伝える書物と、解説者の養成が必要だった…

不仲を超えて

代々受け継いだ羊を守るためには、40年ものあいだ仲違いした兄弟でさえ、結束せざるをえない。 『ひつじ村の兄弟』(アイスランド・デンマーク、グリームル・ハゥコーナルソン)での倫理も愛憎も超えた行動は、愚かでも突き放せないだけの切実さを持っている…

裏側の少女たち

ドラッグと盗みに明け暮れるホームレス少女。 『神様なんかくそくらえ』(米国・フランス、ジョシュア・サフディ、ベニー・サフディ)は、彼女と男友達との救いなき日常を、リアルかつ、哀切を込めて活写する。 共感できなくても立体感のある人間たちが、都…

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