2007-07-01から1ヶ月間の記事一覧

キャラメル回想録

演劇集団キャラメルボックスが創立されて、今年で22年め。最新作『カレッジ・オブ・ザ・ウィンド』のプログラムで、演出家・成井豊が結成当時を回顧している。 旗揚げしてしばらくは、客席が満員になることはあまりなかった。僕は開場時間になると、劇場の前…

ちょっと反対

参院選を前に、ミュージシャンの曽我部恵一(元サニーデイ・サービスのボーカル)が語った(『週刊金曜日』27日号)。 ソロになって初めて出したシングルの『ギター』という曲で、「戦争にはちょっと反対さ」と歌ったんですね。ジョン・レノンが歌っていた…

世界が始まる朝に

チャットモンチーの『世界が終わる夜に』(CD『とび魚のバタフライ/世界が終わる夜に』に収録)が、映画『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』(日本、吉田大八)の主題歌に採用されている。 わたしが神様だったら こんな世界は作らなかった 愛という名のお守…

夏の記憶

本屋で小さな子どもが母親に叫んだ。 「ママー! ナツイチだよ! ナツイチ!」 人の名前ではない。視線の先には集英社文庫が特設の棚に並んでいた。 文庫の広告を子どもは以前から知っていたのか。それにしても、よほど強烈な印象を子どもに与えていたのだろ…

本の親

まともな書き手ほど、自分の著書を見るのは恥ずかしいらしい。 川本三郎が、『あのエッセイこの随筆』(実業之日本社)で、桐野夏生・篠田節子・宮部みゆきのトークショーを見に行ったときのことを書いている。 桐野夏生が「ねえ、本屋で自分の本買うの恥ず…

騒音

森の奥で妻の墓を探し当てた老人が、墓の上で気持ちよく眠る。若い女がそれを見守る。二人を取り囲む木々の間から、飛行機の音が聞こえる。 映画『殯(もがり)の森』(日本、フランス、河瀬直美)の終わりのほうの場面だ。 静けさの意義を知るのは、そんな…

創造の現場

現在、大学教授でもあるアニメーターの安彦良和は、国内アニメの現状をシビアに認識している。 よいものはほんの一握り。今のブームもロボットものなど商業アニメが作り出したいびつな面があるし、外国などに比べて決して優れていない。 勘違いしている学生…

遠縁情報

親しい相手から得る濃密な情報も、もちろん大事だが、ふだん縁の薄い人からの意外な情報も重要だ。 近くの人は自分と似通った情報しか持たないが、めったに会わない人がもたらす情報は新鮮で、時に重い価値を含む。(『日経マガジン』7月15日号「人づきあい…

幸福な誤解

快作『マルホランド・ドライブ』を挙げるまでもなく、多様な解釈ができるのが、デビッド・リンチの映画の面白さだ。インタビュー(日経新聞7月12日号夕刊)に答えて、リンチは笑う。 抽象的なアイデアを形にできるのが映画の魔法。抽象度を増すほど、見る人…

仮想芝居

劇場に着いたとき、すでに舞台が始まっていた。ポツドールの『人間失格』である。場面の都合上、一時的に客止めだったので、しばらく控え室にいた。親切な係員が寄ってきて、モニターを示しながら、ここまでの展開を教えてくれた。 「この男がですね、テレク…

食べる

弘前劇場の演劇には、飲食の場面が実に多い。ペットボトルの水を一気飲みしたり、餅を食べたりする。 『冬の入口』では、父の火葬の際、斎場の控え室で次男と隠し子が対面し、精進落としを食べる。中身は精進落としというよりもお弁当だ。しかも、父の好物で…

水底の砂糖

フランスの映画監督、ブリュノ=デュモンは、元哲学教師。映画学校の試験に落ち、企業ビデオを作りながら映画作りを学んだ。(『週刊金曜日』7月5日号「きんようぶんかインタビュー」) トヨタの生産ラインやキャンデーの製造過程を説明するビデオを何十本も…

ブログの鮮度

藤原新也はブログだけでエッセイ集を作るつもりだった。しかし、あらためてブログに目を通すと、方針を変えざるを得なかった。(『名前のない花』東京書籍) 言葉遣いも荒っぽいし、思ったことをあまり咀嚼することもなく書いていたりする。添削もしない書き…

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