2008-07-01から1ヶ月間の記事一覧

戻るために

「いったんあっちの世界をのぞいて、どう戻ってくるかに人間の本性が出てくる。それが宮さん(補・宮崎駿)は5歳の子供で、私は草薙水素という“女”だったということでしょう」(押井守談・朝日新聞28日夕刊) 『崖の上のポニョ』『スカイ・クロラ』を指す発言…

物語の生まれるとき

「何もしてやれなかったなぁ」という後悔からこの映画は出発している。だからこそ逆に、明るい映画にしたいと強く思った。(是枝裕和―『歩いても歩いても』のプログラムから) 物語は逆説から生まれる。

長い目で

流れに乗れなかったり、つまずいたりしても、長い目で見たらたいしたことではありません。人は、自分に向いているところに落ち着くものです。(桐野夏生談「仕事力」朝日新聞7月20日) たえず悲観的であれば成果が出るというわけでもない。楽観的でいること…

二重の顔

だれもが二重の顔を持つだろうが、使い分けは、たやすくない。 『イースタン・プロミス』(英国・カナダ、デヴィッド・クローネンバーグ)のニコライは、ボスに認められてマフィアに入るが、彼には別の顔があった。暴力に加担しながらも、人道無視の連中とは…

死刑の前に

犯罪は個人のみの問題ではなく社会の問題であるからこそ、向かうべき方向は「犯罪を減らすこと」であって、我々を困らせた人間を殺すことではない。(田中優子「殺さず、悩み続けることに意味がある」『週刊金曜日』18日号) 死刑が実行されれば、受刑者は罪…

バランス

私が呆けた母を自分の仕事もつき合いもやめて介護したら、毎日ヒステリーになって、もしかしたら虐待まがいのことをしたにちがいないと思う。(佐野洋子『シズコさん』新潮社) なんにせよ、それ一筋でないほうが精神のバランスにはいい。

フィクションの意義

劇場のなかに人は、全体が喪われたことを確認するのではなく、喪われた全体を求めるなにものかをみにいくのであり、喪われた全体を回復する意志をみにいくのである。(渡辺保『劇評に何が起ったか』駸々堂出版) 演劇について書かれた一文だが、あらゆるフィ…

余裕のない国

弱者男性は老人になることすらできません。あと一〇年程度で、首をつるか路上で凍死するか、それとも餓死かという選択を迫られます。……企業の人件費に限りがある以上、高齢者の再雇用は、我々のように仕事にありつけない若者が、またもや就業機会から排除さ…

常識

秋葉原無差別殺傷事件について、なだいなだ氏が、常識の見直しを提言している(朝日新聞8日朝刊)。 「皆はこの社会の常識に守られているが、私は守られていない」と誰かが苦痛を感じているとき、私たちはどうするべきなのか。 常識を盾に、その人を無視した…

批評と実作

チェフィッチュの岡田さんや、五反田団の前田さん、ポツドールの三浦さんといった新しい才能が次々に登場し、私もまた、彼らの仕事との関係で語られることが少なくない、その新しい世代は、「現代の若者たちの言語感覚をリアルに捉えた新しい文体」と評価さ…

窓際部署

忙しいわけではない。成果が期待されるわけでもない。杉下右京と亀山薫の所属する警視庁特命係は、窓際部署であるからこそ、じっくりと捜査ができる。『相棒―劇場版―絶体絶命! 東京ビックシティマラソン42.195km』(日本、和泉聖治)でも、マラソン大会の予…

川の流れ

高橋一清は、文藝春秋の元編集者。芥川賞・直木賞選考の事務局長も務めた。作品の選出にあたっては、読者や選考委員を意識して、前回と違う傾向のものを入れるようにしたと言う。 私たちはまさに文学の流れの中にいて、芥川賞直木賞のような大きな賞は、その…

償い

幼児殺しの償いもせぬうちに、神から許されたと思い込む受刑囚。彼の顔は晴れやかだ。しかし、神をだしにしたところで、罪は消えないものである。 『シークレット・サンシャイン』(韓国、イ・チャンドン)で、遺児の母親が、受刑囚の表情を見て、荒れ狂うの…

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