2022-06-01から1ヶ月間の記事一覧

クーデターの現実感

裕福な家の白人カップルが豪邸に各界の名士を招く。優雅な結婚パーティは、突如暴徒に襲撃され、富裕層は金品を得るための人質にされる。貧しい階層の人々が、使用人と共謀したのだ。 世界の縮図とも言うべき『ニューオーダー』(メキシコ・フランス、ミシェ…

私的なオリンピック

『東京2020オリンピック SIDE:A』(日本、河瀨直美)では、競技の勝敗自体よりも、国籍や家庭生活、抗議活動といった、アスリートの報道では重視されなかった側面に重心を置いている。出産後の競技の両立を日本と海外で対比させたのは、河瀨自身の私的テーマ…

現役パイロット

年を取って更新の指南役に徹する選択肢もあるが、『トップガン マーヴェリック』(米国、ジョセフ・コジンスキー)で敏腕パイロットのマーヴェリックを再演したトム・グルーズは、現役のパイロット役として、前線でのアクションを貫いた。共感として若手を率…

愛されるうさぎ

父親がミートパイにされ、残された一家の物語は、決して殺伐としたものではない。『ピーターラビット展』で披露された絵本は、知人の子どもに送った絵手紙から始まる。うさぎの愛らしさは、絵を通して表現された。自然美あふれる農場や屋敷を手に入れたビア…

贖罪の平和

番外のエピソードであり、作画的にも失敗作と言われたテレビシリーズの一編が、再生されたのは、製作当時を知るスタッフの思い入れによるものだ。『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』(日本、安彦良和)では、無人島で負傷したアムロが、島で暮らす子…

日本地図への道

原作がどうあれ、落語的な落ちも、現代キャストの入れ替わりも、映画として不要だろう。とはいえ、『大河への道』(日本、中西健二)は、伊能忠敬を登場させず、地図完成に奔走した弟子たちに焦点を当てたのは正解だった。大広間で披露された地図の美しさに…

当事者にとっての関係

誘拐犯と被害者に見えた男女の関係が、当事者にとっては、まったく別のものだった……。『流浪の月』(日本、李相日)は、DVやら性的障害、過剰報道など、3時間に満たない劇場映画では、材料を盛り込みすぎだが、事件の真相についての問いかけにはなるだろう。

殺人犯の実態

『死刑にいたる病』(日本、白石和彌)で阿部サダヲが演じる死刑囚は、少年少女に優しいパン屋で、仕事ぶりも、きわめて几帳面だ。それだけに捕まえた少年少女を監禁し、殺害するまでの冷酷さが際立つ。殺人犯は、ニュースで報道されるようなわかりやすい人…

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