2007-11-01から1ヶ月間の記事一覧

バランス

ドキュメンタリー作家の森達也は、大学時代、レコード会社に就職した先輩から1枚のデモテープを渡される。担当する新人バンド、サザンオールスターズの曲だった。 「勝手にシンドバッド」は大ヒットしたけれど、あまりのインパクトの強さにコミックバンド的…

憎まれ役

夫人ばかりに注目が集まるが、『レディ・チャタレー』(ベルギー・フランス・英国、パスカル・フェラン)では、チャタレー卿の哀感も目を引く。 戦争で半身不随となり、若い夫人の性的欲求に応えられず、車椅子で事故を起こしそうになってかんしゃくを起こす…

失うもの

『アフター・ウエディング』(デンマーク、スサンネ=ビア)の実業家は、家族の信頼を取り戻すが、病で命を落とす。救援活動家は、寄付金を得るものの、最愛の女性との復縁を果たせない。 なにかを得るためには、なにかを失うことになる。そして、失うものこ…

現役

年齢差を考えてのことか、『タロットカード殺人事件』(英国)のウディ・アレンは、スカーレット・ヨハンソンの恋人役ではなく、偽の父親役である。ヨハンソンを助けるために、結果として命を捨てるというのは、騎士道に基づく二枚目役とも言えようが、まだま…

内面

画文家・大田垣晴子が催眠療法に挑戦している(『わたしってどんなヒトですか?』メディアファクトリー)。 ベットに入り、ヘッドホンから胎内音と音楽、そしてセラピストの声をきく。 気持ちのいい野原を出て、扉を開け、暗闇の中からもう一人の自分に会い……

生命力

逮捕されながらも仕事は通常どおり続き、裁判もいつ終わるかわからない。 カフカの『審判』は、舞台化(松本修・演出、シアタートラム)されたことで、現実というもののけだるさ、滑稽さが鮮明に伝わってくる。 舞台はKが死刑にされる場面で終焉となるが、…

いのちを食べる

機械に入れられて暴れ出す牛に作業員が近づく。電気棒を当てると、ショックで牛の体が崩れ落ちる。機械が回転し、牛を宙吊りにして運んでいく。 ドキュメンタリー『いのちの食べかた』(ドイツ・オーストリア、ニコラウス=ゲイハルター)では、家畜や野菜が…

二足のわらじ

イラストレーターのわたせせいぞうは、40歳まで損害保険会社の営業マンだった。 月曜から金曜までめいっぱい働き、土日に集中して絵を描きました。仕事の合間に漫画のアイデアを考えたこともあるけれど、そのアイデアはよくない。逆に絵を描きながら営業の数…

死者

ちょっと体調を崩し、しばらく持ち応えたかと思いきや、あっさりと死ぬ。死は簡単で、そして、はかない。 松田正隆・作、高瀬久男・演出の『海と日傘』(東池袋・あうるすぽっと)は、自宅で突然倒れた妻が療養のあと、夫にとって、いつのまにか、空想の世界…

想像力

2001年9月11日。ワールドトレードセンターの倒壊を知ったのは、わたしたちが現場にいたからではなく、映像や記事による間接情報からにすぎない。 燐光群の劇『ワールド・トレード・センター』(下北沢ザ・スズナリ)では、その日の光景を視覚的に提示するのではな…

『グッド・シェパード』(米国、ロバート=デ=ニーロ)のCIA諜報員は、家で子どもをかわいがる一方で、局内では残酷な拷問も冷静に見届ける。 家庭と職場で見せる顔が違うのは、CIA局員に限らない。人は場所によって変貌するものだ。 ときには顔の境界線があ…

終末

デパートの通路らしき場所に、大量の洋服やバック、靴が散らばっている。なにかが始まる時間というよりも、なにかが終わった時間のようだ。 やなぎみわのアート写真『Midnight Awakening Dream』シリーズの一枚(『Erevator Girls 』青幻舎に収録)である。 …

死を語る

五反田団の演劇『生きてるものはいないのか』(こまばアゴラ劇場)では、大学付近で人間たちが突如けいれんを起こして死んでいく。なぜ死ぬのかはわからない。 現実に大量の死が発生すれば、死因の明快な説明を要求されるものだが、それは残された者が確認し…

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