2010-11-01から1ヶ月間の記事一覧

貧しさの哲学

『ゲゲゲの女房』(日本、鈴木卓爾)の武良一家は、税務署員も不審に思うほどわずかな収入で暮らしている。 貸本漫画家しげるの安い原稿料と質屋からの借金が頼り。米でさえもツケ払い。それでも、戦場のように命を取られるわけではない。 今が苦しく、先も…

少女の思い出

自分をだまして児童施設に追いやった父。仲良しになってから養父母のもとへ去る仲間。 『冬の小鳥』(韓国・フランス、ウニー・ルコント)の繊細な少女には、酷な仕打ちだったろう。だが、成長の過程には、こうした裏切りに耐える強さが必要なのである。 自分…

コレクター

転売目的ではない。ペット同様、気に入ったものだけを集める。 ドキュメンタリー『ハーブ&ドロシー』(米国、佐々木芽生)の老夫婦が40年かけて集めた作品は、トラック5台分。ささやかなお金を費やし、小さなアパートに入る大きさのアートだけを買い求めた…

誕生の表裏

医院での自然分娩が称えられるだけならば、『玄牝(げんぴん)』(日本、河瀬直美)は、ただの癒し系ドキュメントにしかならなかったろうが、医院のやり方に合わなかった妊婦や、院長の体制に疑問を呈する産婦、院長に親子関係の断絶を宣言する娘の発言をと…

小説と犯罪

世間ふつうの判断で弁護の余地のない犯罪ほど、小説家の想像力を刺戟し、抵抗を与え、形成の意慾をそそるものはない。なぜならその時、彼は、世間の判断に凭りかかる余地のない自分の孤立に自負を感じ、正に悔悟しない犯罪の自負に近づくことによって、未聞…

世界の構造

天井からつるされた紅白の縄は、東京タワーであり、出口への通路だった。五反田団『迷子になるわ』(池袋・東京芸術劇場)は、世界の構造を装置としても表現している。 現在と過去、居場所と異空間を、演劇ならではの反転作用によって、つないでいく。 移動…

ときにはコミカルに

1960年初頭のフランスが舞台とあって、『プチ・ニコラ』(フランス、ローラン・ティラール)の世界は、小学校も会社も、コミカルで、のんびりしているが、デザインセンスの良さもあって、観客を心地よい気分にさせるだろう。 殺伐した世界を見たがる一方、穏…

幸福の存在

『ルイーサ』(アルゼンチン・スペイン、ゴンサロ・カルサーダ)の老女は、規則正しい生活を続け、人付き合いが大嫌い。そんなルイーサが60過ぎで突然の失職。まともな退職金もなく、電気代さえ払えない。 生きるためならば、行動を変革するしかない。彼女が…

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