2021-06-01から1ヶ月間の記事一覧

香港のスター

中国支配下の香港では、学生であれ、新聞記者であれ、たてつく者は、封殺される。スター歌手のデニス・ホーとて、例外ではない。スポンサーが離れ、公演も開催できない。教師である両親にのびのびと育てられ、海外生活を経て、表舞台に立った彼女は、自分が…

あの時代、あの瞬間

映像に音声が合わないというトラブルを克服し、半世紀の時を経て公開された実写版『アメイジング・グレイス アレサ・フランクリン』(米国)。このドキュメントで監督のシドニー・ポラックが優先させたのは、ミュージックビデオとしての洗練度ではない。魂の…

もう一つのコロンボ

刑事と犯人の直接的なやり取りがいっさいない『刑事コロンボ 初夜に消えた花嫁』は、シリーズとしては異色だが、こうした作品があることで、定型の良しあしを再確認できる。 誘拐犯は、これまでのコロンボ物にはなかった猟奇的な気質の持ち主だ。それでも、…

浮浪者のための映画

伯母の遺産を受け継ぐどころか、一文無しになった中年男が、それでも働かずにパリの街をさまよう。金やパートナーのいる人たちにとっては優雅に暮らせる街も、浮浪者にとっては、過ごしやすい場ではない。そんな彼に思いがけぬ結末が訪れるのは、『獅子座』…

人間的な歌

昼は採掘場でパワーショベルを運転。夜はステージで、バンド仲間と心の叫びを歌い上げる。党に利用され、秘密警察に仲間の監視を要請されたのは、東独の理想を信じたからだった。ゲアハルト・グンダーマンは、東西統合後にかつての活動を告白する。『グンダ…

多彩なアニメーション

絵柄も雰囲気も多彩な岡本忠成のアニメーション。『チコタン ぼくのおよめさん』では、好きな女の子のために少年があれこれがんばるが、好意を得たかと思いきや、悲劇に見舞われる。『虹に向って』では、隣村同士の男女が、苦労の末に橋を築き上げ、念願のと…

ゆるい冒険

休暇中の空軍パイロットが、誘拐された婚約者を救出するため、パリからブラジルまで追っていく。ジャン=ポール=ベルモンド主演の『リオの男』(フランス・イタリア、フィリップ・ド・ブロカ)は、冒険活劇といっても、米国映画のような超人的肉体で敵を粉…

政治活動という選択

『政治活動入門』(百万年書房)で外山恒一は、学問や芸術の動機は、時代や社会への疑念や違和感を直截に解決することであり、政治活動をやるのがいいに決まっており、学問や芸術の活動をするのは、政治という最良の選択を分かっていながら、あえてそうしな…

映画としての現実

技能実習生として日本に来たベトナム人女性たち。不当な職場を逃げ出せば、生活するにはブローカーに紹介された過酷な作業場で働くしかない。証明書を取り上げられてしまえば、病院に通うのも正当な手段では難しい。取材をもとにした『海辺の彼女たち』(日…

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