もう一つのコロンボ

 刑事と犯人の直接的なやり取りがいっさいない『刑事コロンボ 初夜に消えた花嫁』は、シリーズとしては異色だが、こうした作品があることで、定型の良しあしを再確認できる。

 誘拐犯は、これまでのコロンボ物にはなかった猟奇的な気質の持ち主だ。それでも、彼が誘拐した花嫁の顔に傷をつけたり、暴行を加えるわけではない。シリーズとしての節度は、ぎりぎり保たれている。新郎である甥のために一睡もせず、わずかな手がかりから犯人を突き止めようと奔走する。花嫁の安全を考えて、現場への突入時に上司を説得する。身内思いで、頼りがいがあるというコロンボのもう一つの側面が、本作で補強されたと言えよう。

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