2020-06-01から1ヶ月間の記事一覧

それぞれの物語

『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』(米国、グレタ・ガーウィグ)のみずみずしさは、古典を今なぜ取り上げるのかという明確な姿勢があり、時代を行き来する構成の工夫も、巧みだからだろう。群像劇の形をとることで、様々な生き方の提示にも…

医師の晩年

言語化しきれていない言葉も、欲している思いも、いっさいを受け止める医師。患者から絶大な信頼を得ている精神科医が、高齢とはいえ、なぜ突然引退したのか。 『精神0』(日本・米国、想田和弘)には、認知症気味の妻と過ごす姿がある。二人だけの時間をよ…

政治の希望

一議員を17年間追い続けた地味なドキュメンタリーながら、『なぜ君は総理大臣になれないのか』(日本、大島新)は、客席の入りがいい。 この映像では、政策や理念の紹介というよりも、選挙活動を通じての家族や地元民とのかかわりを中心に、議員の人柄や姿勢…

生きる執念

男に迎合するわけでもなく、同性のルームメートに感化されるわけでもない。『ANNA/アナ』(フランス・米国、リュック=ベッソン)のヒロインは、故国でDV男と離れてから、米ソ双方の諜報機関で殺し屋として、成長していく。 頼れるのは自分のみ。ファッショ…

映画の復活

政情によって映画を撮ること自体が禁止され、上映さえもまともにできない国もある。スーダンで市民のために映画館を復活されようと老いた映画人が奮闘する『ようこそ、革命シネマへ』(フランス・スーダン・ドイツ・チャド・カタール、スハイブ・ガスメルバ…

人間たち

加害者、同級生、ネット住人……。だれもが残虐で、人身への攻撃はエスカレートするばかり。『許された子どもたち』(日本、内藤瑛亮)は、被害者の遺族でさえ、執拗な冷酷さを緩和しようとはしない。少年が被害者の両親に謝罪をしたあと、暴力を再発する終盤…

上質の娯楽

歌、笑い、スリル……。ハワード・ホークスは、見せ場を知っている。アフリカで動物の生け捕りをする多国籍チームのすったもんだを、『ハタリ!』(米国)は、短いエピソードのつなぎ合わせで、演出する。 ストーリーの起伏だけを好む観客には、受けがよくなく…

青年の物語

理想に燃えた青年将校が、現実の世界で仲間を殺し、嫌っていた皆殺しに加担。統一国を作る望みを果たせぬまま、本国やアラブの支配層の企みに利用された挙句、任務を説かれる。『アラビアのロレンス』(英米、デヴィッド・リーン)は、戦地における青春ドラ…

芸で語る

ミュージカル『イースター・パレード』(米国、チャールズ・ウォルターズ)で、フレッド・アステアやジュディ・ガーランドの妙技は、今さら言うまでもない。特筆すべきなのは、ダンスや歌の素晴らしさが、感情や展開の表現と密接に結びついており、有無を言…

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