2022-11-01から1ヶ月間の記事一覧

そして現代へ

『すずめの戸締り』(日本)では、従来の新海誠の世界に見られた都会の美しさは影を潜めている。男女の運命的な出会いというテーマは維持しながらも、旧作では直接描かれなかった震災や脇役の活躍も比重を増している。平凡ながら愛着の持てる田舎町や通俗を…

捨てたもの

『展覧会岡本太郎』(東京都美術館)には、「太陽の塔」「明日の神話」、CMから野球帽まで、よく知られている作品に加え、パリ時代の習作と推定される絵も公開されている。作品の保管と公開を重視した岡本があえて持ち帰らなかった絵には、彼が捨てた何かが…

一線を越えて

犯罪捜査に食い込むあまり、一線を越えた敏腕刑事。彼を監視する若手刑事は、殉職した父の二の舞を踏むまいと誓いながら、心が揺れていく。『警官の血』(韓国、イ・ギュマン)は、善悪で割り切れない世界の不条理をえぐりとった韓国ノワールだ。

空間の心地

写真を飾るだけではない。スライドがあり、長時間の映像もある。『川内倫子:M/E 球体の上 無限の連なり』(東京オペラシティ アートギャラリー)に俗なものはなく、空間の隅々まで、居心地の良さを体感させる。

音楽の喜び

音楽を通じての信頼と衝突。妥協なき演奏と、アイデアに満ちた作曲。6時間にまたがる3部作、『ザ・ビートルズ Get Back』(英国・ニュージーランド・米国、ピーター・ジャクソン)には、歴史を踏まえた創造の喜びがある。

ひそんでいるもの

幼少時に胸椎カリエスを患い、36歳で亡くなった写真家。「はじめての、牛腸茂雄。」(ほぼ日曜日)では、プリント写真ともに愛読者や日記が展示されている。几帳面な字。被写体の人間性を先入観抜きにとらえた写真。心を落ち着かせ、静かに見つめると、ひそ…

無数の欲望

「武勇伝おじさんは大抵「逮捕なんか恐れるな」など過激路線を無責任に煽る一方、マウント系は具体策は決して出さずにダメ出しばかりする」(雨宮処凛「誰かを馬鹿にしたいという無数の人々の欲望」『週刊金曜日』10月21日号) 「そんな時、心底思ったのは、…

仕事はタイムループ

タイムループで同じ一週間が繰り返され、クライアントに無理難題を押し付けられながら、何度も泊まり込みで同じプレゼン資料を作らなければならない。過酷な日々から脱出するには、チーム全員で結束し、原因を取り除くしかなかった。『MONDAYS このタイムル…

妃の解放

『スペンサー ダイアナの決意』(ドイツ・英国、パブロ・ラライン)は、ダイアナ妃が皇太子との別居を決意したとされるクリスマス休暇のドラマ。窮屈で前時代的な流儀に違和を覚える彼女は、エリザベス女王の私邸から抜け出して、朽ち果てた実家に足を踏み入…

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