妃の解放

『スペンサー ダイアナの決意』(ドイツ・英国、パブロ・ラライン)は、ダイアナ妃が皇太子との別居を決意したとされるクリスマス休暇のドラマ。窮屈で前時代的な流儀に違和を覚える彼女は、エリザベス女王の私邸から抜け出して、朽ち果てた実家に足を踏み入れたり、唯一心を許せる服装係を呼び戻したりする。妃が残酷な雉狩りをやめさせようとして、狩猟現場に集った人々の面前で息子たちを連れ戻す場面が、クライマックスだ。

 さすがの皇太子も彼女にとっての自然な行為を黙認するしかない。悲劇的な過去の妃の本をこっそり読ませた侍従も、根底では、本来の彼女を許容しているように見える。

 ストレスや嘔吐を防ぐならば、情の深さや、子どもや動物への愛情を閉じ込めるわけにはいかなかった。彼女が子どもたちを連れて車を走らせ、ハンバーガーを買いに行くとき、観る者もまた、解放されるのである。

        

 

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