2014-07-01から1ヶ月間の記事一覧
奄美大島で展開される生と死。 『2つ目の窓』(日本・フランス・スペイン、河瀬直美)の家族愛や恋物語は平凡だが、日常の何気ない場面や綿密に撮影された風景が、ドラマ以上に視線を引き付ける。
世界を刷新できるほどのエネルギーはないが、世間と折り合いをつけ、弱いなりに生きていくことはできる。 遠いつながりの存在を少女が知る『思い出のマーニー』(日本、米林宏昌)。宮崎映画のような躍動感がない代わりに、等身大の生き方を提示している。
被災地を励ますボランティア団体では、本来のスローガンを忘れ、仲間同士でいがみ合いが始まっていた。 再演された五反田団『五反田の夜』(アトリエヘリコプター)は、どこにでもある共同体の不条理を喜劇的に誇張しつつ、前田司郎流の妄想世界を炸裂させる…
戦争が繰り返されたら、我々世代のつらい経験は『無』になってしまう。あの戦争で亡くなった人々の無念さを伝えなければ、死んでも死にきれない。(「インタビュー 老兵は闘う 野中広務」『朝日新聞』18日朝刊) 安倍政権における集団的自衛権行使容認に対し…
小説を書くということをいつ始めるか、それから、どのように持続するか、どのように新しいところに歩み出すか、書き始めての長い日々に、それに先立つ実のある沈黙の日々をどう生かすか、小説家には様ざまな生き方のモデルがあります。(「大江健三郎記念対…
どれほどすぐれた感動的な作品であっても、言葉による作品が南アフリカで苦しんでいるエイズ患者、あるいはその他、現実の苦境におかれた人々の現状を変えることができるかどうか、私にはわからない。どんなに力強い詩でも、現実の苦痛を取り除いたり、不正…
食う。寝る。排泄する。 精神病院患者の知られざる世界をワン・ビンがとらえた。 『収容病棟』(香港・フランス・日本)の室内は、ベットのみ。廊下には長椅子が置かれているだけ。シンプルな生活ゆえに、彼らの営みは、きわめて人間的だ。
あらためて読み返してみて、最初の3年半ほどと、この一年半では、少しトーンが変わっていることに気づいた。簡単に言えば、後半部分のほうが攻撃的でストレートに表現しているのだ。 ひとつには、原稿のチェックの仕方を変えたことも大きかったのかもしれな…
自分のやりたいことが込められていない文章は、たとえそれを挿入することが小説をわかりやすくするとどれだけわかっていたとしても、小説のパーツに組み込むことをよしとできない。(岡田利規「生来の感覚を発展させるのか、克服するのか」『新潮』6月号) …