2008-11-01から1ヶ月間の記事一覧

作家の誠実さ

語りたいこととかある思い(フット・フェティシズムでもなんでもいい)を一つの幾何学的な物語に組み立てること、読者に与える効果を考えながらエピソードの順序を入れかえること、語り手をどうするか(一人称か三人称か)を考えること、伏線をフェアに張るこ…

本当の物語

私がすごく面白いと思った話でも、父は愛想で笑ったりせず、「どこが面白いんだ」と一刀両断する。……だんだんどういうお話なら父が面白がるかを覚えていったんです。結果的にお話とは物語であって、この世の中の出来事はたいてい物語で作られているけれども…

食べること

『ブタがいた教室』(日本、前田哲)では、クラスで飼育したブタの処分をめぐって子どもたちが激論をかわす。 食べるために動物を殺すのは残酷なのか。 大人なら、どうにでも釈明できることが、直球思考の子どもには、ごまかしが利かない。 食べることは、快…

寝心地

昼寝して、変な夢を見ちゃったみたいな感じでご観賞ください。(前田司郎―五反田団『すてるたび』の公演パンフから) 観劇をしながらうとうとするのも、心地いい。

幸福の物差し

死を待つだけの死刑囚には絶望しかなく、幸福など感じられるはずがないとするのは、世間が決めた幸福感です。その幸福感を後生大事に抱えている限り、死刑囚は絶望の淵で、不幸を背負って生きるしかありません。 しかし、同じ死刑囚でもこのアラブの死を死刑…

フォーム

小説書きもプロである以上、フォームの世界なんだ。通産打率、持続、を重く考えなければならない。ところがこうい何かを創っていく仕事は、一作に全力を投球しなければならないことでもあるんだ。だから、プロ式とアマチュア式と両方必要なんだな。(色川武…

通過点

ある作品を、「要するにこれこれについて描かれている」というふうにまとめてしまうときに必ず、そのまとめ方から外にあぶれてしまうものが出てくるからです。そのあぶれた部分は、その作品の欠点とみなされるか、その反対に、あぶれているゆえにその役立た…

トラブル人生

ふだん頼りない人間が、トラブル対応の際、水を得たように力を発揮する。どんな職場でもあることだ。『ハッピーフライト』(日本、矢口史靖)では、空港と飛行機内である。 トラブルがあまり頻繁に起きるようだと心身が磨耗するが、たまに起きる程度なら、生…

舞台裏よりも

応募者3000人のうち、最終的に選ばれるのは19人。ミュージカル『コーラスライン』のオーディションだ。しかし、競争が激しいのは、この世界だけではない。 そう考えると、ドキュメンタリー『ブロードウェイ♪ブロードウェイ コーラスラインにかける夢』(米国…

地域俳優

この肉体は両親が作った。しかし、「私」という意識までは作ってくれなかった筈だ。その「私」という意識が出てくる「それ」を世話してやること。地域俳優がもしも現代演劇に欠かせない存在なのだとしたら、舞台で魂の世話をすることに習熟する俳優たちとい…

深みにはまる

『その土曜日、7時58分』(米国、シドニー・ルメット)の兄弟は、資金に困って宝石店強盗を企てて、失敗。立て続けに不幸が訪れ、兄に至っては、自分と縁の深い人物の手によって殺されてしまう。 挽回しようと悪あがきしても、深みにはまって、ますます窮地…

現代人

『ICHI』(日本、曽利文彦)の主人公は女剣士の市。生い立ちはドラマとして平凡だ。不幸な女がたどる典型的な運命を忠実になぞるだけだからである。 作品としては十分描けていないが、浪人・藤平十馬のほうが、印象的ではある。 幼少の頃に自らの剣で誤って…

命の実感

『風のガーデン』(フジテレビ、倉本聰)の麻酔科医・白鳥貞美も、患者の二神達也も、末期ガンである。 死と孤独。 二神の残り少ない日々に、白鳥は自らの姿を重ねている。 命が有限であることを実感するからこそ、生の重みを感じられる。その自覚が遅すぎる…

メディアとモラル

戦地に赴く人間は、モラリストばかりではない。兵士が異常な環境のなかで、軍務を名目として犯罪行為に走る可能性は否定できない。 『リダクテッド』(米国、ブライアン・デ・パルマ)は、実在の事件をモデルにして、イラクでの少女レイプ事件を再現している…

土地の記憶

鹿鳴館跡地には、破綻した大和生命の本社ビルが建っている。 鹿鳴館の痕跡を記者が同社の広報室に尋ねた。 「遺物といえば、これだけでしょうか」。見せてもらったのは鹿鳴館の基礎杭の断片だ。二十五年ほど前、本社ビル新築の際に発掘されたという。変哲も…

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