2014-01-01から1ヶ月間の記事一覧

家庭の秘密

悪人とは言い難い人間にも、ちょっとした秘密や俗な部分がある。 『小さいおうち』(日本、山田洋次)では、各々が長年、隠していた秘密が、変わりゆく時代を背景に明かされていく。 同じ出来事も、見る者によって、受け止め方は異なるだろう。 いつの時代、…

絵作り

思い出や友情を描いた短編アニメ『つみきのいえ』『ゴールデンタイム』(共に稲葉卓也)。靴と職人のコマ撮りアニメ『タップ君』(アンマサコ)。 東京都写真美術館の『手仕事のアニメーション』で上映されたアニメは、丁寧な絵作りが好感を持たせる。

中年の危機

くどいまでの会話劇によって、中年夫婦の危機を露出させる『ビフォア・ミッドナイト』(米国、リチャード・リンクレイター)。 若き日ほどの単純な爽快感も、一途なまでの甘さもなく、さりとて、老年ほどの穏やかさや包容には至らない。まだ夢や体力はあり、…

バカンス

いわゆるバカンス物だが、『ほとりの朔子』(日本・米国、深田晃司)は少女の成長や恋心だけを描いたものではない。人間のもう一つの顔を知らせることで、単眼ではとらえられない、関係や世界を見せつけるのだ。 バカンス的な場所や時間は、我々の日常そのも…

忘れられた光景

「被災地ではまだ仮設住宅で生活している人がいます。仕事場のない人が大勢います。東北の人口がどんどん減っている。その一方で東京の街は明るい。みなさん、東北を忘れているのではないでしょうか」(「ドナルド・キーンさんに聞く」『朝日新聞』15日夕刊…

旅の教えたもの

再会した父に連れられての旅は、トラブルの連続だった。 『旅人は夢を奏でる』(フィンランド、ミカ・カウリスマキ)は、人生の厳しさを目の当たりにさせつつ、人々の隠れた感情を明るみにするロードムービーだ。 謎めいた父に振り回されながら、息子は、知…

芸術一貫

若いうちならまだしも、貧乏芸術家として生涯を通せるのは、ごく一部の者だけである。 ニューヨーク在住の篠原夫妻は、本物だ。 ボクシング・ペインティングを続ける有司男。貧窮と家事に追われた日々を恨みつつ、私小説的ドローイングに打ち込む乃り子。家…

得るもの、失うもの

長年、鑑定の仕事と女性肖像画の収集にのみ没頭した老紳士。引退間近になって、初めて知った恋で、手痛い目に遭う。 『鑑定士と顔のない依頼人』(イタリア、ジュゼッペ・トルナトーレ)の男は、恋を知る時期があまりにも遅すぎた。けれども、浸るべき思い出…

時のつながり

アイドル志望だった母。声優を目指す娘。 生前は疎遠だった母娘が、お互いの夢を知ることで、時代を超えて結びつく。 『麦子さんと』(日本、吉田恵輔)は、定番の和解話だが、時のつながりは、今日こそ、貴重だ。

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