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 魚を愛するが、さばいて食べるのも好き。そんなミー坊が大人になり、一人で生活するまでが、『さかなのこ』(日本、沖田修一)ではコミカルに描かれている。ミー坊を奇異に思う人もいる一方、あたたかく見守る人もいる。子どもの頃は冷ややかな態度だったクラスメートは、困ったときにすがってきた。不良学生だった男が、影響されて板前になった。毎日魚料理を出したり、たびたび水族館に連れて行った母親は、本当は魚好きではなかったのだと、後に明かす。ミー坊に影響された周りは、楽しそうだ。

       

 

主軸の揺らぎ

 前夫との間に生まれた子どもが、義父母を招いたパーティーの際に溺死してしまう。『LOVE LIFE』(日本、深田晃司)の主軸は、子どもを失った夫婦の危機だが、それがどんどん揺らいでいく。息子夫婦と距離のある義父母が近所から引っ越し、妻の前に、ろうあ者で韓国籍の元夫が現れ、夫には元婚約者が接近する。どう転ぶかわからない落ち着きのなさが、深田らしさだ。

          

 

映像の功罪

 映画監督は、表現ができればそれでよかった。時代によって、映像が戦争にかかわることもあれば、平和を訴えることもある。

映像の世紀バタフライエフェクト「映像プロパガンダ戦 嘘(うそ)と嘘(うそ)の激突」』は、イメージを喚起する映像のからくりと、その功罪を濃縮して伝えている。

 無関係の場面をはさみ、目的に不都合な場面をカットし、無思想な人々の感情を操作する映像。戦争というプロジェクトには、厖大な資金が投入され、映像技術の発展に一役買ったと言える。戦意高揚の犠牲者も大勢いるが、映像がなければ、戦争を終結できなかったろうという言葉を否定できないのが、現実である。

                  

 

アートの本道 

 キャプションが作品の横にはなく、別刷りとなっている。ロッカーの石ころや壁の片隅に横たわるネズミ、床上の丸まった紙がいったい何なのか。何の変哲もない物からギャラリーの思考を刺激する『ライアン・ガンダー われらの時代のサイン』(東京オペラシティアートギャラリー)は、アートの本道と言えよう。

             

 

刑事と音楽

 旧時代的な言動をとがめられて、警察音楽隊に異動させられた熱血刑事が、少年期の演奏体験を思い出して、人との付き合いを変えていく。『異動辞令は音楽隊!』(日本、内田英治)は、音楽隊での悪戦苦闘と、刑事時代に手掛けた未解決事件を絡ませたことに、工夫がある。

         



 

映画の解放

 広大な牧場を営む一家が、人の命を奪う巨大な物体を目撃する。父を失った兄妹は謎の解明のために動画を撮影しようとするが……。

 SFとも、サスペンスとも言い難い『NOPE ノープ』(米国、ジョーダン・ピール)。定番の展開やカタルシスからは、ひたすら遠い。映画の起源とされる馬と黒人騎手の撮影フィルムから始まる本作は、型にはまった作劇から解放し、映画を原点に帰すかのようだ。

        

 

純粋の痛み

『希望と絶望 その涙を誰も知らない』(日本、竹中優介)に記録されたのは、2019年12月から2022年3月までの日向坂46の密着記録だ。コロナ禍で途絶えたライブ活動。心身の異変。過剰労働の疲労。常に必死であることをコンセプトにされたアイドルの日々は、彼女たちがあまりにも純粋であるだけに、痛ましくもある。

       

 

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