生物の宿命

 映像で語る神話来てな叙事詩。『デューン 砂の惑星 PART2』(米国、ドゥニ・ビルヌーブ)は、序章を終えた段階だからこそ、その目的を果たしたと言えるだろう。敵対する者はもともと同じ一族であり、砂虫を操れても、人間を完全に制御することはできない。一時の支配権を得たとしても、統制は長続きしない。人類の不安定な歴史は、生物の宿命でもある。

                  

 

土地の愛着

 人口、影響度からすれば、小さな町の復帰にこだわったり、復興に公的資金を投入することに、批判する者もいるかもしれない。生まれ育った土地に、住民が固執するのはなぜか。その地が誕生するまでの経緯、あるいは、そこで暮らしてきた人を助け、支えたものが何であったかを知れば、見方が変わるだろう。

『津島 福島は語る・第二章』(日本、土井敏邦)は、その地で長年暮らした住民たちが、原発事故で帰還を拒まれ、その後、味わった辛酸を語っている。土地の愛着がないがしろにされるならば、別の地でも同じ政策が適用されるのを甘受せざるを得なくなるだろう。

           

 

犬男

   少年時代、犬小屋に放り込まれ、下半身の機能を失い、犬の群れと同居しながら、女装の歌手として生きる男の数奇な運命。『DOGMAN』(フランス)の主人公は、逆境にめげないタフな男。リュック・ベッソンらしい異様なキャラクターをケイレブ・ランドリー・ジョーンズがリアルに演じている。

                  

 

境遇

 ハンセン病を患い、少女時代から80年、瀬戸内海・長嶋の療養所で暮らす。手の指や足を失い、両親とも死に別れた。それでも『かづゑ的』(日本、熊谷博子)の被写体は、様々な葛藤を経て、境遇を受け入れ、今を楽しみ、これから先に向けても、あれこれ挑む。背後には、彼女を支え、応援する人たちの力もある。

      

 

ニュータウンの時間

 世代の違う3人の女たちが、多摩ニュータウンを朝から夜まで散策し、住人と触れ合う。引っ越しした旧友、徘徊する老人、亡くなった幼なじみ。日差しの下、団地の広場や坂を上り下りし、博物館を訪ねたり、住人の古いビデオを見つめる。

『すべての夜を思い出す』(日本、清原惟)で心地よさを生み出すのは、風景だけではない。その場にいない人々の時間の蓄積によるものだ。

              

 

事件後の家庭

 夫の転落死の真相はいかに。『落下の解剖学』(フランス、ジュスティーヌ・トリエ)は、事件を究明する法定サスペンスであり、一見仲睦まじく見える家族の深遠であり、盲目の息子がとらえた非情な現実でもある。

 妻と息子の関係は、裁判の決着だけで修復できるわけではない。閉廷のあと、長い時間を費やすだろう。

      

 

アクセスカウンター