2017-07-01から1ヶ月間の記事一覧

神秘であれ

人の立ち入りが禁じられている孤島、沖ノ島。 『沖ノ島 神宿る海の正倉院』(日本橋高島屋)で藤原新也がとらえた風景は、天候不順の中、わずかに解放された森の姿だ。 神秘的であるべき地は、いつまでも神秘的でなければならない。

彼女たちの奥で

妄想癖あるいは自虐的。どちらのタイプも付き合い難いが、『歓びのトスカーナ』(イタリア・フランス、パオロ=ビルツィ)で精神治療施設を飛び出したのは、そんな女たちだ。 二人の行動は煽情的だが、奥底には容易に癒せない心の痛みがある。

少女の冒険

魔女ではない少女が万一魔法を手にしても、使いこなすのは容易でない。災厄を招くこともある。 『メアリと魔女の花』(日本、米林宏昌)の少女が、恐れを知らぬがゆえに手にした魔法で友達を助け、魔女たちの危険な計画を阻止する。上手な使い方を知るには冒…

寓意の広がり

ユーモラスでグロテスク。魚、花、動物など、象徴的な物体を結集させた風変わりな画が、『アルチンボルド展』(国立西洋美術館)で披露されている。 見慣れた物の組み合わせでありながら、画家の意図は、今も謎のままだ。

脆弱さは政治家だけではない

持ち上げるか叩くだけの若者論、経済を視野に入れない無責任な社会システム論、中年軽視の理想論……。北田暁大・栗原裕一郎・後藤和智『現代ニッポン論壇事情 社会批評の30年史』 (イースト新書)は、現代リベラル派知識人の脆弱な言論を、3人の論客が検証する…

演劇論の演劇

青年団『さよならだけが人生か』(吉祥寺シアター)は、工事現場に集う人間たちの秘められた思いや行為を、登場人物の入れ替わりやセリフの含意から浮き上がらせていく。 構成も演出も、緻密に計算。平田オリザの演劇論を、明快に実行している。

戦場の懐

戦場で人を撃つという選択もあれば、だれも撃たず、敵味方を関係なしに救助に徹するという選択もある。 『ハクソー・リッジ』(米国・オーストラリア、メル・ギブソン)の衛生兵は、砲弾の飛び交う戦場で、敵味方関係なしに人命救助に徹する。米国映画の英雄に…

新境地の是非

変わった人物に生活をかき回されたおかげで、新たな境地を迎えるという物語自体は、珍しいものではない。それでも、『ありがとう、トニ・エルドマン』(ドイツ・オーストリア、マーレン・アーデ)の父の奇行は、尋常なものではない。娘の仕事場にさえ、変装…

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