2022-09-01から1ヶ月間の記事一覧

共に楽しむ

魚を愛するが、さばいて食べるのも好き。そんなミー坊が大人になり、一人で生活するまでが、『さかなのこ』(日本、沖田修一)ではコミカルに描かれている。ミー坊を奇異に思う人もいる一方、あたたかく見守る人もいる。子どもの頃は冷ややかな態度だったク…

主軸の揺らぎ

前夫との間に生まれた子どもが、義父母を招いたパーティーの際に溺死してしまう。『LOVE LIFE』(日本、深田晃司)の主軸は、子どもを失った夫婦の危機だが、それがどんどん揺らいでいく。息子夫婦と距離のある義父母が近所から引っ越し、妻の前に、ろうあ者…

映像の功罪

映画監督は、表現ができればそれでよかった。時代によって、映像が戦争にかかわることもあれば、平和を訴えることもある。 『映像の世紀バタフライエフェクト「映像プロパガンダ戦 嘘(うそ)と嘘(うそ)の激突」』は、イメージを喚起する映像のからくりと、そ…

アートの本道 

キャプションが作品の横にはなく、別刷りとなっている。ロッカーの石ころや壁の片隅に横たわるネズミ、床上の丸まった紙がいったい何なのか。何の変哲もない物からギャラリーの思考を刺激する『ライアン・ガンダー われらの時代のサイン』(東京オペラシティ…

刑事と音楽

旧時代的な言動をとがめられて、警察音楽隊に異動させられた熱血刑事が、少年期の演奏体験を思い出して、人との付き合いを変えていく。『異動辞令は音楽隊!』(日本、内田英治)は、音楽隊での悪戦苦闘と、刑事時代に手掛けた未解決事件を絡ませたことに、…

映画の解放

広大な牧場を営む一家が、人の命を奪う巨大な物体を目撃する。父を失った兄妹は謎の解明のために動画を撮影しようとするが……。 SFとも、サスペンスとも言い難い『NOPE ノープ』(米国、ジョーダン・ピール)。定番の展開やカタルシスからは、ひたすら遠い。…

純粋の痛み

『希望と絶望 その涙を誰も知らない』(日本、竹中優介)に記録されたのは、2019年12月から2022年3月までの日向坂46の密着記録だ。コロナ禍で途絶えたライブ活動。心身の異変。過剰労働の疲労。常に必死であることをコンセプトにされたアイドルの日々は、彼…

休暇の時間

男二人組が、相乗りアプリで知り合った青年と共に、南フランスの田舎町へ。『みんなのヴァカンス』(フランス、ギョーム・ブラック)は、恋人のけんかや恋敵との衝突、人妻との交流がゆるやかなタッチで綴られる。笑いがあり、哀しみがある。彼らの世界に、…

量産型の楽しみ

汎用キャラクターのプラモデルを組み立てることで生き方のヒントを得る女たち。『量産型リコ』(テレビ東京)のヒロインは、イベント会社の所属部門存続も、自身の恋愛成就もままならないが、量産型の視聴者にとっては、そのほうがいい。派手な成功もない分…

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