2015-06-01から1ヶ月間の記事一覧

根底の問題

2002年6月。イスタンブールの安宿に貧乏旅行の青年たちがたむろし、合同開催のワールドカップ・サッカーを観戦する。 日韓合作の青年団『新・冒険王』(吉祥寺シアター)に集うのは、日韓米の青年だが、完全には打ち解けられない。出自をたどれば、民族の対…

どら焼きのごとく

どら焼き屋で働く前科者の店長と素性不詳の老女との交流。 『あん』(日本・フランス・ドイツ、河荑直美)は謎めいた人間劇を品のいい映像で魅せる。 ドリアン助川の原作小説と河荑の演出が、生地と餡のごとく、柔和に調和している。

キャラクターの活力

奇抜な状況設定だけで完結しがちだった園子温。『新宿スワン』(日本)は、漫画の原作によるキャラクターが躍動することで、ストーリーにダイナミズムを生んでいる。 歌舞伎町のスカウトマンの攻防には、やくざ映画ほどの殺戮はないが、ぎらつくエネルギーが、…

サンドラの得たもの

リストラ撤回の投票で賛同を得るために同僚宅を回る女。『サンドラの週末』(ベルギー・フランス・イタリア、ジャン・ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ) での彼女の苦闘は、民主主義を徹底するための行動と、真の友情のあり方を問いかける。 結…

中高年の青春

ポップミュージシャンとして日本の第一線で活躍した大江千里が、50歳近くになって渡米。無名のミュージシャンとしてニューヨークの学校で基礎から学んで、ジャズピアニストを目指す。 『9番目の音を探して』(KADOKAWA)は、大江自身が綴った謙虚な…

憲法のリアリティ

今の日本で「権利」や「人権」が守られているのはごく一部、という現実がある。……だからこそ、すべきこと。それはリアリティを失った「憲法」に、リアリティを取り戻すことだと思うのだ。「憲法が大切」と言うと同時に、権利が侵害されている人たちの権利を…

空間の広がり

ままごとの音楽劇『わが星』(三鷹市芸術文化センター)は、一時代前の家族の団地生活を宇宙にまで広げて、過ぎ去った時間のかけがえのなさを体感させる。 ジャンルの越境は、空間の拡張と連関する。

孤独の深部

同性愛発覚で左遷された警察署長と、継父に暴力を振るわれる少女。二人の孤独な女が結びつき、結びつくことで傷つけあう。 『私の少女』(韓国、チョン・ジュリ)の背景には、異分子に対する男の抑圧社会があるが、性差以前の普遍的な情愛やつながりが、深部…

楽しき趣味

趣味や収集を徹底する人物は、いつの時代も少なくない。けれども、見聞の表現や嗜好のセンスにたけた者は、決して多くない。 企画展『植草甚一スクラップ・ブック』(世田谷文学館)は、サブカル文化人である植草の、ノートや直筆原稿、スクラップ・ブックな…

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