2010-06-01から1ヶ月間の記事一覧

ある結婚式

結婚式は新郎新婦のためだけの儀式ではない。親族や知人たちが久しぶりに対面する社交場だが、現況が喜ばしいものとはかぎらない。 弘前劇場『春の光』(アサヒ・アートスクエア)では、式の控え室で、郷里で暮らすことを娘が父に告げる。父の死が近いことを…

虐殺する者も

こまつ座の『組曲虐殺』(脚本:井上ひさし)は、小林多喜二の家族と特高のやりとりをミュージカル仕立てで描いている。 多喜二をしつように追及する特高は、冷徹なだけではない。情にもろく、苦労人だ。 虐殺する立場の者もまた、人間である。この悲喜劇の…

支配される者

沖縄人は、本土に利用されるばかりではない。本土を利用もしている。 佐野眞一『沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史』(集英社インターナショナル)では、ヤクザ・政治・経済・芸能などの世界の恐持てでエネルギッシュな人間たちが紹介されている。 だか…

密約の責任

沖縄返還の代償として、日本が米国に提案した密約は、結果として、基地の固定化を招く事態になった。提言者だった大学教授は、返還から24年後、責任を感じて命を絶つ。 『密使 若泉敬 沖縄返還の代償』(教育テレビ)で、密約以降、罪の 意識が消えなかった…

美学

娘のための復讐。広場のゴミ捨て場。 ジョニー・トーは、単純な復讐劇をそう思わせず、画にならないような場を画にしてしまう。 『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』(フランス・香港)に込められたトーの美学は、タイトルの臭さを払拭する。

心構え

Uターンしたところで、安定した生活が待っているというわけではない。『川の底からこんにちは』(日本、石井裕也)の佐和子も、都会生活になんの希望も持てず、実家のシジミ工場を継ぐことになったが、工場は経営悪化の一途をたどっていた。 帰るべき家があ…

二元論

世界は二元論で解明できるものではない。 善玉と悪玉が対立し、共闘する『ゼブラーマン ゼブラシティの逆襲』(日本、三池崇史)は、滑稽劇ではあるが、世界の現実と距離がある。

おもしろい本

あんまりおもしろい本に出合ってしまうと、読みながら私はよく考える。もしこの本が世界に存在しなかったら、いったいどうしていただろう。世界はなんにも言っちゃいないだろうが、けれど、この本がなかったら、その本に出合えなかったら、確実に私の見る世…

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