2018-09-01から1ヶ月間の記事一覧

生きる女

体現された女の生き方。現実と小説とのかかわり。二兎社『書く女』は、樋口一葉の生きざまを彼女に影響を与えた大勢の人間を絡めて、浮き上がらせていく。 場面転換の妙、視点の現代性など、いずれも巧みだ。小説の悲劇性、一葉の薄幸から、逆説的に生きる力…

ギリギリのエンタメ

囚人上がりの軍人たちが、ドイツ軍将校のパーティーに潜入し、屋敷の爆破を決行する。成功すれば、減刑を果たせるのだ。民間人さえも地下に閉じ込めての発火は、ナチスの収容所政策を連想させる。 はぐれ者の活躍で奇襲は成功したものの、敵味方双方とも多数…

アートの国

88歳の映画監督アニエス・バルダと、34歳のストリートアーティストJR。年の離れた二人同士もさることながら、アートに協力する労働者たちも、アートに対する敬意がある。『顔たち、ところどころ』(フランス、アニエス・バルダ、JR)は、アートが生活に根づ…

奥崎謙三的なもの

原一男・疾走プロダクション編著『ドキュメント ゆきゆきて、神軍 増補版』(皓星社)は、本編のドキュメンタリー映画を上回る奥崎謙三の強烈なエピソードを明かしている。執拗さ、強引さ、いやらしさ……。とは言え、被写体の元軍人であり、犯罪者でもある奥…

人と時間

濱口竜介の映画と言っても、『寝ても覚めても』(日本・フランス)は、2時間弱に収まっている。プロの俳優を使えば、濃縮した時間でも十分に広がりを感じさせることができるのだ。 似ていても異なる新旧二人の恋人に挟まれて、女の心は揺れるが、それでも落…

輪廻転生

愛しあいながらも陰謀で死を遂げた男女が、400年後に再会。インド映画だと、とにかくめちゃくちゃで、派手な話になる。めまぐるしく踊り、闘い、場面転換し……。『マガディーラ 勇者転生』(S・S・ラージャマウリ)を見れば、お腹いっぱい。まさにインド映画だ…

 みんなのために

『泣き虫しょったんの奇跡』(日本、豊田利晃)は、奨励会大会後に特例でプロ入り復帰を果たした棋士・瀬川晶司のサクセスストーリーよりも、彼を支える人々の印象が強い。担任教師、父、仲間、道場主、プロ入り支援者……。瀬川は、彼自身だけでなく、応援す…

あのとき、なにが?

民主化闘争時に取り調べ中の学生が拷問で警察に殺され、デモに出た若者は、催涙弾をぶつけられて死んだ。 『1987、ある闘いの真実』 (韓国、チャン・ジュナン)は、忘却されがちな歴史の裏面を掘り起こし、現代の観客に目撃させる。

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